Vol.69 これまで使ってきた動画編集ソフトを振り返る[土持幸三の映像制作101]

久しぶりに「動画編集ソフトは何を使っていますか?」と質問され、使っているソフトを答えたのだが、自分は今までどのような動画編集ソフトを使ってきたのか、その理由も含めて振り返ってみた。

筆者が動画編集ソフトを決めるのに影響を与えたのは、使い勝手やそのソフトで可能なことの有無などは当然だが、他のソフトとの連携、キャプチャボードとの相性、カメラで使用されるコーデックが使えるかどうかだったと思う。

最初はAdobe Premiere

筆者が最初に使った動画編集ソフトは、当時、大学のApple Macintoshに入っていたAdobe Premiere 4か4.2だったと思う。ただ当時は授業では8mmや16mmのフィルムを使った授業が主で、編集も当然フィルム自体を直接切り貼りするスタイルだったので、パソコンを使った編集は素材がないのでできなかった。ただ、パソコン内にあった動画をタイムラインに並べて遊ぶ程度のことはやっていたように思う。

その後、キヤノンのXL1が発売され、デジタルビデオカメラで短編を撮ることが流行り始め、さらにカノープス(現Grass Valley)からDVRaptorという画期的なキャプチャボードが発売され、それまで編集スタジオなどにお願いするしかなかった動画編集が、一挙に自宅のパソコンで撮影した素材を取り込み編集できる環境が整っていったことで、筆者も動画編集ソフトに対して大いに興味を持ち始めた。

そのような時期にAppleのFinal Cutやカノープス(現Grass Valley)のEDIUSなど、今に続く動画編集ソフトが発売されていき、筆者の周囲にも自宅のパソコンで編集を行う人が少数派ではあるが増えていったのを覚えている。オフライン編集は自宅でやってオンライン編集はスタジオで、予算があれば高価なInfernoを使って編集してもらうという流れができていった。

WindowsでProResが書き出せる安定感抜群のEDIUS

Windowsを使っている映像制作者なら必ず通るAppleへの移行を筆者が初めて考えたのもこの時期だったと思うが、引き続きAdobe Premiereを使い続けた。その後、Adobe Creative Suiteに統合されてからはAdobe PhotoshopやAdobe After Effectsとの連携が格段に上がり、Adobe Photoshopのレイヤーでグラデーションフィルターやビネット効果のフィルターを作って、Adobe Premiereのタイムラインで使うことに興奮したことを覚えている。この頃のAdobeは最強だったかもしれない。

Adobe Creative Suite(写真はCS6)で他を圧倒したAdobe Premiere

編集スタジオはAppleだらけ

EDIUSがテレビ局で使われることが増えてきたと友人から聞いて見に行ったのもこの時期だったと思う。しかし、ここでAppleがProResという優秀なフォーマットを出してきて、一挙に映像業界のスタンダートになり、編集スタジオはAppleだらけになって、納品形態もProResでという流れになっていく。 ミラーレスカメラで撮影した圧縮率の高いAVCHDの素材でも、編集後、無理矢理ProResに変換して納品を求められた経験もあり、再度Appleへの移行を考えたが自作PCの魅力の方が勝り、今へと続いている。

現在のメインはDaVinci Resolve

現在はDaVinci Resolveをメインで使っている。同じBlackmagic Design社のカメラを所有し、Blackmagic RAWで撮影した素材の編集、カラーグレーディングがとても快適で他に変更する理由が見当たらない。ただ、Windows版ではProResを書き出すことができないので、必要な場合はEDIUSに書き出し、ProResに変換している。動画の公開される環境の多様化により、以前ほどProResでの納品を求められなくなった。

また、よく仕事をする制作会社がAdobeなので、稀ではあるがAdobe Premiereを使うこともある。Adobe PremiereおよびAdobeソフトは法人や学校など、多くの人が使うのに向いているのと、多くのサードパーティがプラグインソフトを出しているのが魅力だろう。

カラーグレーディング専用だったが今では総合的な動画編集ソフトになったDaVinci Resolve

筆者のお勧めは、個人で使うのであればやはり無料版もあるDaVinci Resolveだと思う。ただ今回、名前をあげた動画編集ソフトはプロキシファイルという非力なパソコンでも編集しやすくなるファイルを作成することが簡単にできるようになっており、以前のようにパワーのあるパソコンを必要としなくなった。パソコンでの動画編集に興味を持たれている方はぜひ、自分に合う動画編集ソフトを探してほしい。

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