◆藤嶺藤沢8―1横浜氷取沢
本来のエースもクリーンアップもいない。新型コロナウイルス禍で主力を欠いた横浜氷取沢。それでも、主将代行の平野は「中軸がいなくても打てるメンバーはそろっている。ワンチャン(ス)あると思っていた」。強豪私学を相手に勝負を捨てず、ナインは最後まで戦い抜いた。
不運に見舞われたのは開幕直前だった。新型コロナの影響で複数のレギュラーが離脱。試合前まで登録変更が可能な今大会の特別ルールに救われたが、不安がなかったと言えばうそになる。
奮い立たせたのは仲間への思いだった。3回戦まで勝ち進めば合流できる―。背番号10の3年松下は「投げられない3年生の分まで、長いイニングを投げてやろう」と先発のマウンドに立った。
藤嶺藤沢の主砲に臆せず胸元へ直球を投じ、右打者の外角にはスライダーがさえ渡る。3回2死まで無失点。六回からは代役でベンチ入りした1年生の政氏が3回を無失点に封じ、打線は四回の連打を足場に相手主戦から1点をもぎ取った。
試合は1―8の完敗。だが、結果が全てと捉えるのは野暮(やぼ)だろう。ウイルスに行く手を阻まれ、猛暑で足をつる選手が相次いでもなお、互いを補い合って九回まで戦い抜いたのだから。
平野は少し照れくさそうに笑った。「いいピッチングをしてくれたし、エラーもほとんどなかったから、みんな許してくれるかな。精いっぱい戦ったよって伝えたい」