【2022参院選しずおか】11分でわかる!県政担当がみた勝敗を分けたカギ

7月10日に投開票された参院選静岡選挙区(定数2)。自民党新人の若林洋平さん(50)が初当選、無所属現職の平山佐知子さん(51)が2回目の当選を果たしました。

投票率は前回選より2.51ポイント高い52.97%となった戦い、勝敗を分けたカギとは。静岡の政治・選挙研究の第一人者・白鳥浩法政大学大学院教授とSBS県政担当松木翼キャップが分析しました。

水野涼子アナウンサー

若林洋平さんの勝因はどんなところにあったか

松木翼県政キャップ

若林さんの勝因は2つかなと思う。当選の挨拶の中でも若林候補が言っていたが、とにかく選挙前までの8か月間というのが地獄のように辛かったというような話をしていた。参院補選で敗れてからすぐ、この本戦でのリベンジというのを誓って、自民党は静岡県内に67支部あるが、本当にくまなく8か月間休みなく回ってきたんだと、それによって、しっかりと自民支持層の地盤を固められたのかなと思う。

そして、そのまま選挙戦に流れて、まさに自民党らしい組織戦というのを今回展開したという印象。前回の参院補選の時よりも大幅に街頭演説、そして、集会を重ねる数というのも増やし、まさに組織力を見せつけた自民党らしい戦いを見せたと感じる。

水野

今回、この自民党らしい組織戦で若林候補、勝因ということなんですけども、大物議員なども入ったほか、細野豪志衆院議員もだいぶ応援に入っていた

松木

静岡県東部では自民党に入党したばかりの細野氏が、何度も応援演説に駆けつける場面があった

細野豪志衆院議員

「安全保障を考えた時に最も頼りになる男がここにいるじゃないですか、皆さん。この選挙は若林さんだけの選挙ではないんです。もちろん自民党の選挙だけれども、それ以上に私、細野豪志の選挙だということをわかっていただきたい」

「自民党としての初陣。前回の衆議院選挙における私、細野豪志の三島の得票率は54%。7つの市町の中で最大の票を、皆さんに叩き出していただいた。この選挙は私、細野豪志の選挙であります。どうぞもう一度立ち上がっていただいて、私にいただいたその力を、今度は若林洋平に託していただけないでしょうか皆さん、いかがでしょうか?」

水野

若林候補と同い年の細野議員の力強い演説だったが、白鳥先生はどうご覧になるか

白鳥教授

細野議員で非常に印象的だったのは「私の選挙なんです」っていう言い方。細野議員、自民党に入党されて初めての大型国政選挙の応援ということになって、細野議員にとっては、ここで一体どれだけ自分が貢献できるかということを示したい、そういう思いが発言の中に溢れている

松木

静岡5区の問題っていうのもあるが、細野議員としてはここで自民党としての存在感を「自民党の入党した細野ですよ」ということを見せつけたかったっていうのはすごくあったと思う。

若林候補が御殿場市長をやってる時から、細野議員と一緒に仕事する場面も多くて、2人は仲はすごくいいという。だから、すごく若林候補も細野議員に応援に入ってもらったことが感慨深かったみたい。

水野

続いては、平山候補の勝因はどんなところにあったか

松木

平山候補は敵を作らない政財界の人脈づくり、そして守備力の高さというふうに挙げた。今回、街頭演説を少なくしてという特殊な選挙戦を戦ったが、この6年間で与党も野党もそういった壁も関係なく、味方作りをしてきた、そういったところを、例えば選挙戦の間でも、街頭演説をやらない時間帯で、挨拶回りをすごく続けてきたっていうところも、平山候補らしい、完全な無所属だからこそ敵もないんだよ、みんながみんな味方になってくれるんじゃないかっていうことで、ありとあらゆるところに支持、支援を広げていたというところが印象的。

もう一つ守備力の高さというのが、今回外的要因が少しあったんじゃないかっていうこともあると思う。山崎候補の女性問題であったり、そういった一定のある意味失策が平山候補に有利に働いたっていう側面ももちろん今回の選挙あると思うが、それ以上に平山候補にはそういうミスがないっていうところはすごくしっかりして、やっぱりアナウンサー時代からのブランド作りと言うか、自分をどう見せるかっていうところは、すごくしっかり意識されてやれてやってきているなというような印象を持っている

白鳥教授

平山候補のビラの裏を見ると「命と平和を守り抜く」って書いてある。一方、若林候補のビラには「命と暮らしを守る」。非常に政策的に似ているところがある。自民党、あるいは公明党の支持者の方が一定数平山候補に投票してるっていうのはそんなところもあるのかも知れない。

水野

コロナなどもありまして、命、平和、ウクライナの問題など、命について考えるところも訴えかけるところにあったのか。

白鳥教授

街頭演説回数が少なかったが、その中でやはり子育てとか、女性の目線を非常に強く生かした政策を訴えていたということが非常に印象的だった。

水野

街頭演説の回数、平山候補、かなり少なく抑えている

松木

7月6日までの途中の集計なんですけども、公示からこの10何日間の間に、若林候補は119回あったのに対し、平山候補はたったの18回ということで、いかに平山候補が特殊な今回選挙戦を戦ったのかということだと思う

平山候補が今回街頭演説やらなかったのは、遊説カーで回ってると幼い子供を起こしてしまうっていうので、すごく子育て世代から街頭演説のあり方や選挙戦のあり方考え直してほしいという声を受けてのことだったそうだ

水野

一方、山崎候補の敗因はどのあたりにあると思うか

松木

山崎候補の場合はやはり一番大きいのが、川勝知事の応援が参院補選のときにはあったものが、今回なかったこと。参院補選は、その少し前に行われた知事選の延長戦というような形で、川勝知事が応援に入ることによって作られた。若林候補対山崎候補というよりも、むしろ川勝知事対自民みたいな形に見えるぐらいの選挙になり、川勝知事の4選の勢いそのままに山崎候補も補選で勝ったということだったが、今回それがなくなったことでここまで勢いが落ちるかというような結果になったのかなと思う

ただ、今回の選挙戦、川勝知事がコシヒカリ発言もあり、「絶対あの人の応援に入らない」って言っていたが、山崎候補の演説の中では、「私は川勝知事と共にある」というようなことをよく強調されていたのが印象だった

山崎候補

「昨年の県知事選挙の時から、東京時代から静岡時代を作ろう、そのキャッチコピーを掲げて、ここにいる県議や市民の皆さんと、そして川勝知事とタッグを組んで戦ってきました。今でも戦ってるんです。私の横にはずっと川勝知事もいます。タッグを組んでやってます」

「皆様には見えないかもしれませんが、川勝知事は今私の横にいて、常に一緒に政策を動かしている」

「8か月間しかなかったから、もっともっと働きたい。まだ5日ありますから、全然追いつきますから、どうか力を与えてください。助けてください」

水野

言葉の中にも川勝知事という言葉が何回も出てきた

松木

実際、選挙戦に入る前に陣営の方から川勝知事に応援をお願いするようなこともしていたが今回はそれは叶わず、前回選は「静岡ショック」と呼ばれるムーブメントを起こしたが、その勢いは今回見られなかったという形

水野

他にも敗因がいくつかある

松木

もう一つはやはり立憲民主党の推薦が得られなかったということが大きいのかなと思う。立憲民主党に関しては、実は推薦出せなかった大きな理由というのは、女性問題もあったんが、一番大きな理由は、(山崎候補は)「無所属・無会派で当選後行く」と言っていたが、実際は当選後すぐに国民民主党の会派に入ってしまった。そうすると「さすがに推薦出せないよ」ということだった。ただ、(立憲民主党の)渡辺周衆院議員から、実はどうしても立憲民主党も自分たちの候補を今回擁立できていないので「選挙期間中だけでいいから無所属の会派に鞍替えしてくれないかと、そうすれば俺たち推薦だけ出せるから」っていうような話もしたそうだが、山崎候補はそれを飲まなかったというようなこともあって、やはり推薦できず自主支援という苦しい支援の形に立憲民主党が置かれた

白鳥教授

立憲民主党の推薦がないとなると、なかなか連合も本腰では選挙運動ができないということが多分あったと思う

水野

公示前には元自民党の吉川赳議員の女性問題もあったが今回の選挙戦に影響は出たか

松木

元自民党の吉川衆院議員のスキャンダルは本来だったら、若林候補に不利になるようなはずだったが、蓋を開けてみると、若林候補にはあんまり影響はなく、山崎候補に影響が出たんじゃないかという見方が結構大勢を占めている。それも吉川衆院議員の記事報道を見て、山崎候補の女性問題を思い出してしまった方が多いんじゃないかというような話が、どこの陣営でも多く聞かれた声であったのは確か

水野

公示直前ということで、かなり山崎候補が影響を受けてしまった?

松木

かも知れない

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