自分にも相続税申告が必要になるかも?判断ポイントを税理士が解説

平成27年に相続税の基礎控除が引き下げられてから、サラリーマンや公務員の方で、相続税の申告が必要になる人が増えています。自分は相続税がかかるのかどうかわからない人のために、税理士が判断のポイントをお伝えします。


「相続税がかかりそうなんですが…。相続税申告は必要でしょうか?」

最近よくあるご質問です。相続税の基礎控除額の引き下げにより、相続税の申告が必要になる方が増えました。今回は専門家に相談する前に、ご自身でもできる相続税の申告要否の判断ポイントをお伝えします。

平成27年の相続税の基礎控除引き下げ以降、相続財産が5,000~8,000万円ほどの方の申告件数がかなり増えました。一般企業のサラリーマンや公務員の方なども相続税の申告が必要な方が増えているようです。

相続税は個人単位で課税されます。ご夫婦で共働きをされていらっしゃる方も多いと思いますが、相続財産は夫婦合算でカウントされる訳ではありません。あくまで亡くなった方個人の相続財産が基礎控除を超えるかどうかで判断されます。

相続税申告が必要かどうかの目安は?

さて、相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えれば相続税の申告が必要となってくるわけですが、その相続財産には亡くなった方の所有する財産全てが含まれます。ただし、相続税申告が必要かどうかの判断の際は、メインの財産の概算値が確認できればおおよその判断はつきます。

メインとなる財産は以下の5つです。

(1) 土地
(2) 建物
(3) 預貯金
(4)有価証券
(5)生命保険金

それぞれの概算値の確認方法は?

それぞれの概算値の確認方法は以下の通りです。

(1) 土地 → 固定資産税評価額×1.1
毎年、市区町村から送られてくる固定資産税納税通知書に「固定資産税課税明細書」という書類が同封されています(名称は市区町村により若干違う場合があります。)その固定資産税課税明細書に「固定資産税評価額」という数値がありますので、それを1.1倍してください。

(2) 建物 → 固定資産税評価額
同様に建物の「固定資産税評価額」を確認してください。建物の場合は土地と違い、1.1倍をする必要はありません。

(3) 預貯金
通帳を記帳したのち、残高を確認してください。定期預金も含まれますので別途定期預金証書等がないか確認が必要です。それらを合算して「預貯金の合計は○○○○万円」くらいの概算値でもよいでしょう。

(4) 有価証券
証券会社から3カ月に1回程度送られてくる運用報告書に、直近の残高と時価評価額が記載されています。時価評価額を確認しましょう。「有価証券の合計は○○○○万円」くらいの概算値でもよいでしょう。

(5) 生命保険金
こちらは保険証券から、終身保険の生命保険金額を確認し、合計しましょう。ただし、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を生命保険金額の合計額から控除することを忘れないようにしてください。

上記(1)~(5)の合計額が基礎控除額を超える場合は相続税申告が必要となることが多いでしょう。1つの判断ポイントとしていただければと思います。ただし、あくまでも概算値ですので、正確には税理士に相談することをお勧めします。

相続税は一次相続よりも二次相続に注意

一次相続とは、例えば夫が亡くなり、妻と子が相続人になる場合などをいいます。これに対して二次相続は、夫が亡くなった後に妻が亡くなり、子が相続人になる場合などをいいます。

相続税の計算において、一次相続と二次相続で大きく異なる点は、「基礎控除額」と「配偶者控除の有無」です。基礎控除額は法定相続人の数によって決まります。一次相続の後、新たに子が誕生する、または養子縁組をするなどがなければ、二次相続で法定相続人が減ることに伴い基礎控除額も減り、相続税が増加する要因となります。

また、一次相続では、配偶者が財産を引き継ぐ場合、配偶者控除により法定相続分、もしくは1億6,000万円の、いずれか大きい額までの財産に対して相続税はかかりません。つまり一次相続で1億6,000万円以下の財産を配偶者が相続する場合、その配偶者には相続税がかからないことになります(ただし、配偶者控除の適用を受ける場合は相続税の申告が必要です)。二次相続では、この配偶者控除が適用されなくなることも相続税が増える要因になります。

小規模宅地等の評価減の特例にも注意

小規模宅地等の評価減は「個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用または居住の用に供されていた宅地等のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額する特例」とされています。

例えば夫が所有し、居住していた宅地を妻が相続した場合(一次相続)は、小規模宅地の評価減の特例が適用され、宅地の相続税評価額について最大80%の引き下げになります。そのあと妻が亡くなり子がその宅地を相続する場合(二次相続)に、子が自分の持ち家に住んでいるケースでは、この小規模宅地等の特例が適用されません。最大80%評価が下がる特例が適用できなくなるわけです。このようなケースも、二次相続において相続税が増える要因となります。

相続税がかかるかどうかを概算で確認し、もし相続税がかかるようであれば相続税対策を検討する必要があります。相続税対策については、配偶者控除や小規模宅等の特例の適用も含め、一次相続だけでなく二次相続までを見据えることが重要です。相続税対策に詳しい税理士に相談しながら進めていくとよいでしょう。

税理士:藤原由親

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