参院選自民の井上氏、演説で同性愛に言及 SNSで批判も

当選が決まり花束を受け取る井上義行氏=11日、小田原市の事務所

 参院選比例代表で自民党公認候補として当選した井上義行氏(59)=小田原市=が選挙期間中に「同性愛などをかわいそうだと言って(容認したら)家族や家庭ができず、子どもたちは日本を引き継げるのか」などと性的少数者に対する差別と受け取られる演説を繰り返していたことが11日、分かった。

 発言を巡って交流サイト(SNS)などで批判が相次ぎ、井上氏は神奈川新聞社の取材に「差別と受け取られるのであれば今後、国会議員として注意したい」と釈明している。

 井上氏は参院選が公示された6月22日、小田原駅前の出陣式で同性愛や核家族を引き合いに「しっかりと家族を産み出し、子どもたちを育てる環境をつくっていかなければいけない」と発言。「2千年培った家族の形が外国からの勢力によって変えられようとしている」とも訴えた。

 また、7月4日には川崎市内の演説で「同性婚を認めてしまったら、男女という2千年の歴史から始まった人類が否定される」と主張。インターネット上で「同性婚を法制化した国は人類を否定しているのか」「今の時代にあり得ない」などと批判を浴びた後も「何で差別というか分からない。どんな批判を受けても訴えていく」と繰り返した。

 井上氏の発言に対し、性的少数者の支援団体「fair」の松岡宗嗣代表理事は「同性愛者が子どもをつくれないことが少子化を助長させるとの趣旨の主張は誤りで優生思想的。あえて性的少数者差別を利用した票集めをしている」と反発。県西部で同性パートナーと暮らす女性は「私たちは全国に存在していて政治家の身近なところでも生きている。イメージだけの同性愛者を語らないでほしい」と怒りをあらわにした。

 11日未明の当選後に取材に応じた井上氏は、同性婚を認めていない民法などの規定を「合憲」とした6月の大阪地裁判決を根拠に「制度として、同性婚には反対と言ったつもり。多くの反対意見もあり、国会でしっかりとした議論が必要」とし、「家族3世代で暮らす社会を目指す。国家全体的に考えるとできれば(若い人には)家族をつくってもらいたい」と強調した。政府見解では、同性婚の法制化について「現行憲法の下では、同性カップルに婚姻成立を認めることは想定されておらず、慎重な検討が必要」としている。

 井上氏は小田原市出身で旧国鉄職員を経て、第一次安倍内閣では首相首席秘書官も務め、2013年の参院選比例でみんなの党で初当選。自民党にくら替えした19年参院選で落選した。

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