食材価格の高騰で給食費値上げ…望まれるのは無償化、実現に向けZ世代が議論

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」では、食材価格の高騰による“給食費の値上げ”について、Z世代の論客が議論しました。

◆子どものメンタルヘルスにも大きく関与する"学校給食”

食材価格の高騰により、都内では今年4月、5区で給食の値上げが実施され、家庭負担が増えた自治体も。さらにメニューにもその影響が見られ、子どもたちに聞いてみると、大好きな「焼きプリン」などが出なくなってしまったという悲しい声が。

そんな給食に関しては、昨年の衆議院選挙の際、食文化研究家で株式会社食の会 代表取締役の長内あや愛さんが「無償化」を提言。それに反して値上げしている現状に、長内さんは改めて「学校給食の無償化をぜひお願いしたい」と切望します。

長内さんによると、現在、給食費は自治体が負担しているところもあれば、家庭と公費で分担しているところもあるなど、自治体ごとに対応は異なるそう。そして、給食自体は学校給食実施基準をもとに、1ヵ月の平均的な栄養が摂れるよう各学校で作られ、特産のものを使うことが提唱されている点などを説明します。

臨床心理士のみたらし加奈さんは「食とメンタルヘルス」の観点から給食の重要に言及。現在、欧米では"精神栄養学”が注目されていることに触れ、「食事がどれくらいメンタルヘルスに影響を及ぼすのか研究結果として出ていて、子どものときから栄養素をきちんと摂っていくことがうつ病などに関係していたりするので、やはり給食は国が負担してあげることが大事」と訴えます。

では、当事者となる子どもを持つ親はどう思っているのか。街頭で聞いてみると「(給食費は)やはりちょっとつらい。自治体負担だと助かる」(小4の母親)、「ちょっときついが、しょうがないと言えばしょうがない」(小4の父親)、「どこも同じルールのもとでやってもらえたら助かる」(小1の母親)、「食事も子どもの教育に大事。給食もまとめて無償化してくれればわかりやすくて良い」(小1の母親)といった声がありました。

◆給食費無償化への最重要課題"財源”はどうすべきか?

2021年の衆議院選時の給食に関する政策を比較してみると、自民党は記載なし。公明党は公立小中学校の完全給食実施、その他の政党は無償化を公約に掲げていました。

しかし、それから約1年、各党から給食費無償化に結びつく動きがあるかといえば、キャスターの堀潤は「立ち往生している感じが」と印象を述べます。

株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは、給食費無償化に賛成なものの、実現には「財源論」に帰結すると言います。古井さんが調べたところでは、無償化には約4,500億円かかるそうで、単純に人口1億人で割れば、1人あたり年間4,500円。「これだけのお金をみんなが払えば無償化できる。高いものの、子どもにかけてもいいのではないか」と投げかけます。

長内さんは、財源問題の他にも、公費で無償化した場合に子どもがいない家庭も負担するのか、子どもにアレルギーがあり、お弁当を持参している家庭は不平等になるのではないかといった課題を示した上で「(無償化は)賛否が分かれる」との指摘も。

財源がひとつの論点となるなか、「国が一律的に給食費を負担するのは無理だと思う」との見解を示したのは、アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さん。

というのも、例えば横浜市は完全給食を実施していない中学校がおよそ80%あるなど、自治体によって状況が異なるから。「まずは自治体が無償化し、一律の基準を満たしてから国にあげていくのが良いと思う」と提案します。

この意見に長内さんは「その通りだと思う」と支持する一方で、約60%の学校が独自で給食費の徴収を行っている現状を「学校の負担が大きすぎる」と懸念しつつ、それが自治体に移行したとしてもどこも予算が厳しいだけに「学校、自治体、国とそれぞれ負担を少しずつ分配できれば」と案じます。

古井さんは、国の補助金・助成金などをうまく活用すべきとしつつ、そこで自治体ごとに差が出てしまうことを懸念。というのも、補助金などを上手に活用できるかは首長の手腕にかかっているからで、「国がやることが重要」と主張します。

また、みたらしさんは給食費無償化に向け「子どもがなぜ栄養満点の食事をとる必要があるのか、それを国が専門家と議論し、わかっていくことも大事」と意識改革を求めます。そして、財源に関しても「コロナの予備費で使途不明金が11兆円もあるのに、なぜ子どもにとって重要な食に予算を割けないのか」と不満を露わにし、「自治体や親が頑張ればいいというわけではない。国が予算を透明化した上でやっていくことが大事」と力説。

◆給食費無償化を実現した明石市の取り組みとは?

子どもの貧困を研究する跡見学園女子大学の鳫咲子教授によると、予算のないなか、給食費はすでに保護者負担が定着している節があり、払うことが難しい場合には「就学援助」が用意されているものの「申請した子どもは恥ずかしい思いをするし、なかなか申請しにくい現状がある」と指摘。

こうした状況に、古井さんは「子どもは親の経済力に関係なく生まれてくるので、それで嫌な思いをしてしまうことがなくなってほしい」と望みます。

2018年の文科省調査によると、小中学校ともに無償化しているのは、1,740の自治体のうち76。4.4%に留まっています。しかも、そのうち56の自治体が人口1万人未満で、大きな自治体では進んでいないのが現状です。

そんななか、兵庫県明石市では2020年度から年間約3億5,000万円を負担し、市内の全13の中学校で完全無償化を敢行。人口20万人以上の都市では初の取り組みで、財源は市が独自に行っていた保育無償化が国の取り組みになり、その浮いた予算を活用しています。

なお、韓国では高校まで給食費の無償化が実施されています。前述の鳫咲子教授は、給食費の無償化にあたって、予算の管理は現在の市区町村ではなく、都道府県単位で行うことを提唱。さらに、財源としては教育分野だけでなく、農業分野とも協力して確保していくといいのではないかと話していました。

これに長内さんは「地産地消、地元の食材を使えば安く済むものもある。だから、自治体ごとにやりくりするのが重要だと思う」と持論を述べつつ、食育の観点からも「地元の食材を知ることは、大人になったときに食糧自給率について考えることなどにも繋がる」と言います。

また、阿部さんはまず現在、どれだけの自治体が無償化しているのか、最新の実態を把握すべきと訴え、さらには無償化に成功している地域の財源を分析していくことで、その他の自治体の参考になると提案すると、みたらしさんも「各自治体がお互いのいいところを吸収し合い、豊かになっていくことは重要。明石市のような取り組みがもっと広がれば」と期待を寄せます。

長内さんは、子どもの食を守るために「学校ごとの負担減 自治体ごとのやりくり、議論」と、Z議会からの提言を発表。

まずは学校の負担となっている給食費用の徴収をやめ、無償化に向けた財源として「自治体ごとにやりくりするための議論」を望み、「特産のものを使ったり、地元の農家と相談すれば旬のものを安く買えるので、一律にということではなく、無償化した上で自治体がやりくりをすることで実現可能ではないか」と行政に要請します。

この意見に堀も賛同し、「それこそデジタル田園都市構想で、スマート農業やデータで管理して食品ロスを減らす民間農業法人や新たな企業とタッグを組んで、できるコミュニティの範囲でやっていけばいい」と提案。

長内さんは大きく頷きつつ、「(給食費の無償化は)絶対にできると思う。それが子どもたちにとってどれほど良い影響があるかというところを、ぜひ大人たち、私たちもともに考えていきたい」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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