アルピーヌの速さに「本当に驚いた」とブエミ。8号車はトラブル時に油圧ブレーキだけで走行/WECモンツァ

 TOYOTA GAZOO Racingのセバスチャン・ブエミは、WEC世界耐久選手権のハイパーカー・クラスにおけるアルピーヌのフォームが、これまでのところ「非常に読みにくい」と感じている。

 ブエミ、平川亮、ブレンドン・ハートレーのトリオで2022年シーズンを戦う8号車トヨタGR010ハイブリッドは、第4戦モンツァ6時間レースで、アルピーヌA480ギブソンのマシュー・バキシビエール/ニコラ・ラピエール/アンドレ・ネグラオ組に次ぐ総合2位となった。

 アルピーヌのバッジを着けたオレカ製のノンハイブリッドLMP1マシンは日曜の午後、レースペースとスティントの長さにおいて、トヨタのLMHル・マン・ハイパーカーに匹敵した。

 これは、2021年に始まったハイパーカークラスにおけるトヨタとアルピーヌの間でもっとも近い戦いを生み出した。同クラスは昨年、日・仏両ブランドが走らせるクルマのスティントあたりのラップカウントを合わせるのに苦労しており、通常はアルピーヌの周回数が数ラップ少なかった。

 2024年にLMDhプログラムを開始するフランスのメーカーは、開幕戦セブリングを制した後、20kW(約27PS)の出力制限を受けた第2戦スパでは競争力を奪われ2位となった。その後、先月のル・マンではメカニカルトラブルに見舞われる以前にBoPの規制を受け、ペースとスティント長の両方で厳しい戦いを強いられた。

 それにもかかわらず、アルピーヌのドライバーたちはかろうじて選手権リーダーの座を守って迎えたこのモンツァでふたたび勝利し、8号車のクルーに対するリードを10ポイントに拡げている

 この結果に対し、ブエミは「優勝できなかったことは、明らかに少し腹立たしい」とSportscar365に語った。

「アルピーヌの速さには本当に驚かされた。とても読みにくい」

「ル・マンの最初のセッションでは4秒差だったが、予選では僕らと同じように走り、レースではとても遅かった」

「(FIAとACOは)彼らにほんの少し(パワーを)戻したが、彼らは僕たちよりもさらに速くなっている。誰もがそれを公平にしようと努力しているが、(モンツァでは)彼らにはついていくことができなかった」

ブレンドン・ハートレー(左)、平川亮(右)とチームを組むセバスチャン・ブエミ(中央) 2022年WEC第4戦モンツァ6時間

 ル・マンで4度の優勝を誇るブエミは、トヨタのLMHと今季が最後のシーズンとなるアルピーヌLMP1のコース上での接近戦に複雑な表情をみせた。

 アルピーヌよりもパワーはあるが車体が重いトヨタは、長いストレートでは強い一方でコーナーでは弱く、そのキャラクターの差がエキサイティングなレース展開を生むことになった。

 接近戦は楽しかったか、と聞かれたブエミは次のように答えている。

「そうでもあるし、そうでもない。僕たちは、自分たちのクルマと競争するために作られたのではないクルマとレースをした」

「彼らはコーナーが速いし、(タイヤのデグラデーションが)小さいから4スティントも走れる。たしかにストレートでは少し遅かったが、ほぼ同じスピードで走っていた。意味がわからないけど、そういうものなんだ」

■8号車のトラブルに即座に対処したTGR

 ブエミとトヨタ8号車クルーは、最初の1時間で電子制御ブレーキに問題が発生したとき、起こりうる可能性があったレース序盤での大きな遅れを克服してみせた。

 TOYOTA GAZOO Racing WECチームのテクニカル・ディレクターであるパスカル・バセロンは、マシンを“デフォルトモード”に切り替え、電子制御の不具合が解消されるまでの間、ブエミに油圧ブレーキ のみで走らせたと説明した。

「私たちはそれほど時間を失わなかった。ここから私たちが非常にうまく問題に対処したこと、チームの経験が非常に優れていることが分かる」と同氏。

「デフォルトモードに入ったので、(MGUによる回生ブレーキではなく)メカニカルブレーキになった。我々のクルマはその状態で2周した」

「それは私たちに問題を解決する時間を与えた。これは我々が準備してきたことだ。テストで準備するのとレース中に完璧にこなすのは違うが、8号車のチームは本当によくやってくれた」

「ブエミはこのようなシステム変更を管理することに非常に長けている。最終的に、私たちはこの問題からかなり早く回復した」

 トラブル発生時のペースダウンと、ピットイン時のパワーサイクル(再起動)によって一時は総合5番手に順位を落とした8号車は、レース中盤のセーフティカーランを経て迎えた後半戦はおもに2番手を走行。終盤にアルピーヌに抜かれ2位に終わったが、その差はわずか2秒762だった。

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