“自民圧勝 野党惨敗・上” 自民、党内力学に影響も 参院選長崎

金子農相(中央)の後継として初当選を果たし、支援者らに頭を下げる山本氏。圧勝は党内力学に影響を及ぼす可能性もありそうだ=長崎市元船町、平安閣サンプリエール

 6人が争った参院選長崎選挙区(改選数1)は、自民現職で農相の金子原二郎氏(78)の後継として立候補した元自民県議の山本啓介氏(47)が、次点に10万票以上の差をつけて初当選し、幕を閉じた。なぜここまでの圧勝劇が生まれたのか-。
 10日午後8時、投票箱が閉まった直後。全国で2番目に山本氏の「当確」がテレビで速報された。長崎市のホールに集まった支援者を前に、金子氏は「ここまで(当確が)早いのは初めてのことではないか。バトンタッチできてほっとしている」と穏やかな表情を見せた。
 保守分裂となった2月の知事選のしこりや知名度不足-。そんな不安を抱えながらの戦いは、ふたを開けてみると全21市町で勝利。背景には、自民の強固な組織力と山本氏に有利に働く条件が重なったことがありそうだ。
 ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響で物価が高騰。不安定な世情を前にして「国民が岸田内閣に安定した政治を求めた」とある自民県議は分析し、報道各社の調査でも山本氏は序盤からリード。「どこに行っても『勝てるだろう』という雰囲気だった」(同県議)。ただ、しこりの影響もあって投票に行ってもらえないのではないかとの懸念が陣営にはあり、演説会では「調査の数字は岸田内閣への支持率で、(山本氏への)投票とは違う」などと引き締めに躍起になった。
 終盤の8日には奈良市で自民の安倍晋三元首相が銃撃され亡くなるという予想だにしない大事件が発生。“弔い合戦”のムードが漂い、「最後に投票率を押し上げた」(陣営関係者)との見方もある。当選から一夜明けた11日、約26万1千の大量得票の感想を問われた山本氏は「それよりも相手が(3年前より)票を減らしたことの方がインパクトが大きいのでは」と述べた。
 「相手」とは、2回目の参院選挑戦となった立憲民主の白川鮎美氏(42)。3年前の前回は自民現職の古賀友一郎氏(54)に約3万4千票差まで迫った。山本氏の陣営関係者は「今回はSNS(交流サイト)の拡散が乏しいなど、白川陣営は中途半端な戦略が多かった。山本氏は『敵失』に助けられた側面もある」と言う。
 長崎県政界は昨年の衆院選から世代交代が進み、山本氏もまた金子氏からバトンを引き継いだ。ただ事態はそれにとどまらない。今回の圧勝は3年前に古賀氏が白川氏に付けた票差を大きく上回る。関係者の間では党内力学に影響を及ぼす可能性もささやかれている。


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