チームの「お兄ちゃん」的なポジションで、圧倒的な存在感を放っているベテランがいます。現役時代にお手本としていた守備の名手、チームに10年ぶりに復帰した藤田一也さんです。
3度のゴールデングラブ賞に輝いた楽天時代には、「YouTube」でキャンプ映像や好プレー集を繰り返し見ていたほど憧れてました。どんな打球に対してもバウンドを合わせるのがうまくて、歩数をかけずにすっと入っていき難しい打球を簡単にさばいていく。
練習中に二塁付近でボールを受けていると、森やタツ(柴田)さんが教えを請う姿を何度も見てきました。タツさんは自分の形、考えをしっかり持っている。率先してアドバイスを聞くのは珍しく、藤田さんのうまさはやはり、誰もが認めるところなんでしょうね。
春季キャンプでは「なじめてない、あんまり」と漏らしていましたが、7月3日の40歳の誕生日ではサプライズでチーム全員から祝福され、うれしそうにケーキのろうそくの火を消していました。呼び方も「藤田さん」から「一也さん」、「カズ兄」と変わっていって、いるだけで安心感もあります。
不慣れな代打での起用が続いていましたが、試合中はベンチ裏で走ったり、ストレッチをしたり、打席に対して準備を怠ることは1度もありませんでした。代打の成績は打率2割6分9厘、出塁率3割4分5厘と結果も残してきました。
10日に出場選手登録を抹消されましたが、三浦監督の言葉を借りれば「リリーフ陣を減らすことはチーム事情的にできなかった。しっかり準備して待機してもらう」。優勝経験のある最年長の「お兄ちゃん」は若きチームには不可欠。用意周到に準備を進めて、その日を迎えてくれると思っています。(横浜DeNAベイスターズ・百瀬 大騎)