藤井裕久さん死去 90歳、非自民の政権で蔵相や財務相

藤井裕久氏

 蔵相や財務相、民主党幹事長を務めた元衆院議員の藤井裕久(ふじい・ひろひさ)氏が10日午前11時ごろ、死去した。都内の自宅で倒れているのを家族が見つけた。90歳。葬儀は家族のみで執り行い、弔電や香典は辞退する。後日、お別れの会を開く。

 東京生まれで、1955年に東大卒業後、旧大蔵省に入省。官房長官の竹下登、二階堂進両氏の秘書官を務めた。77年に自民党から参院選全国区に出馬して初当選、90年に衆院議員に転身した。大蔵省時代に藤沢税務署長を務めた縁で、中選挙区時代の衆院神奈川3区(藤沢市など)から出馬し、神奈川を政治活動の拠点にしていた。

 1993年に小沢一郎氏らと自民党を離党して新生党に参画。細川・羽田両内閣で蔵相を務めた。政界再編に伴い、新進党、自由党、民主党と歩み、2009年の政権交代で発足した鳩山内閣で財務相に就任。野田政権時代には民主党税制調査会長として、消費税率引き上げなどを柱とした社会保障と税の一体改革の実現に尽力した。13年に旭日大綬章を受章した。

 戦時中に空襲や学童疎開を体験。戦争を肌で知る世代の責任として、戦争の理不尽さ、平和の尊さを訴え続けた。

 神奈川新聞で20年12月から3カ月間、「わが人生」を執筆。今年3月に「公に尽くす 平和こそすべての礎」という書名で出版されたばかりだった。印刷直前にあとがきを加筆してロシアによるウクライナ侵攻に触れ、「これまで以上に平和の大切さを訴えていく決意を新たにいたしました」とつづっていた。

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