ポルシェのエストーレ、裁定に不満爆発。同じ違反でも「フェラーリがペナルティを受けないのはいつものこと」/第4戦モンツァ

 WEC世界耐久選手権第4戦モンツァで、レース終盤にAFコルセの51号車フェラーリ488 GTE Evoと印象的なクラス3番手争いを展開したポルシェGTチーム92号車ポルシェ911 RSR-19のケビン・エストーレは、ふたつのアクシデントの責任があるとして科せられたドライブスルーペナルティに対し、不満を露わにした。

 レース終盤、エストーレはレズモ(ターン7)でLMP2のJOTA28号車ジョナサン・アバディンに接触し、28号車はグラベルに埋まっていた。

 さらにこれによって、51号車フェラーリをドライブするアレッサンドロ・ピエール・グイディが、92号車のテールに張り付くこととなった。

 その後、エストーレとピエール・グイディは表彰台をめぐる激しい接近戦のバトルを展開。1コーナーでサイド・バイ・サイドから軽く接触して51号車がエスケープに逃れたり、ターン4までの加速で先行した51号車に92号車が軽く追突し、両車がともにコースオフするシーンなどが、特に印象的だった。

 エストーレはその後、28号車および51号車との接触についてドライブスルーペナルティを受け、クラス4位でフィニッシュしたが、ペナルティの裁定に失望し、不当なものだと感じているという。

「あのペースでは、今日はチャンスがなかった」とエストーレは語っている。

「唯一の可能性は、燃料の節約と戦略の面で、他のドライバーよりも良い仕事をすること、だけだった」

「最終スティントでは燃料スプラッシュをせずにゴールしようと燃料を節約していたのだが、フェラーリとバトルをすることになり、何回か接触してしまった」

「また、僕をオーバーテイクしようとしたLMP2とレズモで接触したが、彼はかなり楽観的だったと思う。彼はアウト側へ行き、グラベルに向かった。残り10分というところで、僕はLMP2との接触と、51号車との接触でドライブスルーペナルティを受けた」

「僕からしたら、51号車との接触についてペナルティを受ける必要はなかった」

「51号車は僕をパスし、2台はともにコース上にとどまることができたものの、(ターン4〜5のショートカットにより)彼の方がよりアドバンテージを得ていたからだ」

 エストーレはまた、レースのスタート時の51号車の動きに対して出された裁定が、開幕戦セブリング1000マイルレースで同様の違反をした92号車への裁定と矛盾していると感じ、スチュワードの裁定処理に対して疑問を呈している。

 セブリングでは、スタート時のLMP2とGTとの隊列間隔についてのレースディレクターからの指示に従わなかったとして、LMGTEのフロントロウに並んだ2台のポルシェに対し、ピットストップでの15秒追加という裁定が下されていた。

 今回のモンツァでは、ポールシッターのフェラーリ51号車ピエール・グイディが「レースディレクターからの、LMP2との間隔を詰めよとの指示に従わなかった」という事実判定が為されたものの、その裁定は「同様の違反が2022年シーズンの終わりまでに犯された場合において、ドライブスルーペナルティを科す」という“執行猶予付き”のものとなっていた。

フェラーリ51号車を先頭にGTEクラスのスタートが切られた、WEC第4戦モンツァ

「僕らが審議になるとペナルティを受け、フェラーリが審議されてもペナルティを受けない。これはいつものことのようだね」とエストーレ。

「今日のスタートもそうだ。彼らはLMP2勢に対してスペースを空けすぎてスチュワードに呼ばれたのに、ペナルティはなかった」

「セブリングのスタートでは僕らはLMP2との間隔を空けすぎ、スチュワードに呼び出されて15秒のペナルティを受けたのに」

「このようなストーリーがWECではまかり通っているようで、僕はスチュワードの判断レベルに感心していない。なぜなら常に僕たちがひどい目に遭わされ、フェラーリはそれを回避するからだ」

「僕にとっては、これはレースじゃない。そしてこの先、(トップカテゴリーに)より多くのマニュファクチャラーが参戦して競争が激化した際には、さらに悪いものになる可能性がある」

■バトル自体は両者とも納得「これがレース」

 かくしてペナルティという裁定は下されたものの、エストーレもピエール・グイディも、劇的かつ、時にアグレッシブだったこのポジション争い自体に対しては、動揺することはなかったという。

「とてもキツいバトルだった。ふたりとも100%クリーンではなかったとは思うけど、良いショーだったと思うし、ふたりとも無事にレースを終えることができた」とエストーレは言う。

「これこそファンが見たいものだと思うし、僕はフェアなレースだったと考えている。だから、僕のペナルティは必要のないものだったと思うんだ」

「結局、彼は僕をパスした。僕らは何度か接触したが、彼はシケインをショートカットしたときに僕を追い越したんだ。彼はそれによってアドバンテージを得たから、彼がひどい目に遭ったとは僕は言えない」

「彼が僕を抜くのには、おそらく彼が予想していた以上に時間がかかったと思う。だけど、彼を抑え込むのが僕の仕事だからね」

ポルシェファクトリードライバーのエストーレ。2023年はLMDh車両『ポルシェ963』のドライバーにも選出されている

 一方のピエール・グイディは、エストーレが「少し余計にプッシュしてきた」と感じたというが、このバトルについては不快に思わなかったという。

「ありとあらゆる場所で、僕はプッシュされていた」とピエール・グイディ。

「それが一種の復讐だったのかは分からないが……(編註:両車は2021年最終戦でも、タイトル争いをするなかで接触)。僕としては、このようなこと(92号車へのペナルティ)は予期していないものだった」

「だが結局、これは激しいレースなんだ。少しプッシュされすぎだなとは思ったが、これがモータースポーツというものだ」

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