ザ・フーのアナログ・リイシュー企画から新たに『 The Who Sell Out』と『Tommy』がリリース

ザ・フー(The Who)の比類なきカタログをハーフ・スピード・リマスタリングのアナログ盤で再発していくリイシュー企画から、新たに『The Who Sell Out』と『Tommy』がリリースされた。

長年ザ・フーを支えてきたエンジニア、ジョン・アストリーがリマスタリングを施し、アビイ・ロード・スタジオのマイルス・ショーウェルによってラッカー盤にカットされた限定ブラック・ヴァイナルが、オリジナル・アートワークを再現した帯と認定書付のパッケージで登場した。

『The Who Sell Out』:ロック史上初の皮肉がめいた作品

ザ・フーが1967年にリリースした『The Who Sell Out』は、バンドの初期の代表作として認識されており、昨年、マルチディスクのデラックス・エディションが発売されことで、評価を新たにした作品だ。ピート・タウンゼントは同アルバムのリリース当時、Melody Maker誌に次のように語っていた。

「アルバムのためにたくさんの曲を作ったんだけど、アメリカから帰ってきた時、このアルバムを何か全体としてまとまりのある作品にしなければならないことに気づいたんだ。その時点ではテーマはなく、過去から現在までの曲を集めただけだった。それから、コカ・コーラの広告用にインストゥルメンタル・トラックを作る機会があって、ジングルや広告の謳い文句を使ったコマーシャルとしてアルバムを作るというアイデアが浮かんだんだ」

ローリング・ストーン誌のコーリー・グロウはこのアルバムについて次のように評している。

「“ザ・フーは金が欲しいだけだ”という唯一の概念に基づくコンセプト・アルバムに見せかけた、高尚な芸術と低俗な芸術の軽妙なマリアージュというロック史上初の皮肉がめいた作品である。彼らは、ふざけたデオドラントやニキビクリームのコマーシャルで曲を繋ぎ、さらには本物の広告代理店を雇い、ジャケットのアートワークのためにロジャー・ダルトリーをハインツのベイクド・ビーンズのお風呂に入れた。そんな仕掛けでもなければ、曲そのものは見事なまでの寄せ集めなのだ」

『Tommy』:稀代の名盤

『The Who Sell Out』に続く作品として、約17ヵ月後にリリースされた『Tommy』について、ピート・タウンゼントは1970年のCrawdaddy誌のインタビューでこう語っている。

「ロックンロール的にも、ザ・フーの歴史の上でも、それから僕らがそれまでやってきたことという意味でも、大きな一歩にしたかったんだ。素晴らしいプロダクションみたいなものは特に求めていなかったので、サウンドはとてもシンプルで、だからこそ基本的なアイデアの強さが重要であることが伝わってきて、嬉しかったよ」

Written by Richard Havers

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