<社説>感染者数過去最多 医療体制守る対策を

 県内の新型コロナウイルス感染者数が3436人と過去最多を更新した。これまで最多だった5月の大型連休後の2702人を大きく上回った。 感染対策とワクチン接種など予防措置を徹底する必要がある。県民には「かからない・うつさない」よう、自らや周囲を守る対策に加え、医療体制を守る観点からの協力も求められている。

 県は、本島と八重山の各圏域の病床使用率が、入院調整が困難となる6割を超えたとして、両圏域にコロナ感染拡大警報を出したばかりだった。

 全県の病床使用率も56.9%となっており、行動制限を検討する指標である6割に迫っている。

 感染増加で県内の医療を巡る状況が厳しさを増している。コロナ以外の一般病床の使用率も96.4%と高い値だ。救命救急センターのある重点医療機関では感染などで欠勤する医療者の増加が続く。

 必要性があるにもかかわらず、入院できない患者が増加することが懸念される。島嶼(とうしょ)県である沖縄で救急医療の崩壊が現実味を増している。

 実際に救急医療の現場は疲弊している。

 本来は地域のクリニックを受診すべき人が、重点医療機関を直接受診するケースが多い。早く受診してもらいたいがために、救急車を呼ぶ患者もいるという。ただでさえコロナ感染増でストレスのかかっている救急の現場では離職者も出始めた。

 感染対策に加え、医療機関の適正利用をいま一度徹底する必要がある。コロナ感染が疑われる場合はかかりつけ医や24時間対応の県コールセンターに相談し、昼間に発熱外来を利用することが推奨されている。

 10歳未満の感染も高い数値が続く。児童や乳幼児のいる家庭では夜間の急な発熱に戸惑うことも多いはずだ。県は夜間も対応している小児救急電話相談の利用を呼び掛けている。使うべきサービスを適正に利用することで救急医療体制を守りたい。

 島嶼県の沖縄では、医療従事者の応援を他県から簡単に得ることができない。離島では医療逼迫(ひっぱく)に陥る懸念が常につきまとう。応援態勢についてもあらためて確認しておく必要もあるだろう。

 全国の感染者数は3月以来の7万人超えとなった。感染拡大は全国的な傾向だが、人口割で沖縄の状況は突出している。

 県内の増加は、感染力の高いオミクロン株の派生型「BA.5」への置き換わりと交流機会の増加が背景にあるとされるが、他府県との違いは果たしてどこにあるのか。ワクチン接種率や感染対策の緩みとの関連はどうなっているのか。

 国と県は沖縄の感染状況についてしっかりと分析してもらいたい。現状について県民の理解を得ることが、感染対策への協力を得ることにもつながるはずだ。

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