熱海土石流の発生から1年…堀潤が現場の様子、現地の人々の思いをレポート

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。7月6日(水)放送の「フラトピ!」コーナーでは、発生から1年が経過した“熱海土石流 被災地の今”をキャスターの堀潤が取材しました。

◆熱海土石流から1年、いまだその責任の所在は不明のまま

2021年7月3日、熱海市・伊豆山地区で大規模土石流が発生。災害関連死を含め27人が死亡し、1人がいまだ行方不明となっています。発生当時、すぐさま現地へと赴き、大変な現実を目の当たりにした堀が、1年後のいま、改めて現場へと向かいます。

現場近くの小学校では、追悼式が行われ、遺族や関係者など約90人が参列しました。その中には齊藤栄熱海市長の姿も。そこで「未然に防げなかった理由」「具体的な対策まで落とし込めなかった理由」について問うも、市長は「市が今後行う総括の中でお示ししていきたい」と答えるにとどめています。

静岡県や熱海市、そして土地の現所有者・旧所有者など、土石流の起点となった土地の関係者は現在、誰もその責任を認めておらず、犠牲者遺族らはこの日、県と市に損害賠償を求め提訴することを明らかにしています。

一方、1分間の黙祷が行われた土石流の発生現場は、1年経った今も土砂に飲み込まれた家屋はそのまま。少しずつ撤去が進められているものの、当時の生々しい様子は今も手が付けられない状況です。

◆熱海の復興を願う、地元のZ世代のリアルな思い

地域に住む人々の多くが早期の復旧・復興を願うなか、今回堀は実家のコマツ屋製麺が土石流に襲われた被災者のひとり、Z世代25歳の中島茉子さんに話を伺うことに。

土石流の発生時、家族とともに自宅にいたという中島さん。当時のことに関して「母が『砂埃が山のほうで立った』とか『電信柱が揺れている』と言っていて、そしたら(自身が撮影した)動画のように土砂が流れてきて、その後、何波も来たんですけど、怖くて自宅で隠れていて"私、今死ぬのかもしれない”と思いました」と振り返ります。

また、発生時はサイレンなど事前に危険を知らせるものはなかったことに加え、「後々聞いてみると上の方はもう(土砂が)流れていて、ズルズル来ていたのに下の人に教えてくれなかったとかもあったので、それを聞くと"もっとできたことはあったよね”と正直思いました」と胸中を吐露。

1年が経過した今も、当時を思い出すとつらい気持ちになるという中島さんは、被災後、東日本大震災をはじめ、他の被災現場の数年後の様子を見るようになり、共感を覚えるようになったことを涙ながらに語ります。そして、「頑張っている人の姿はみんなに勇気を与えてくれると自分自身の経験で思って、私も頑張ることで違う被災地の方、同じ地域の方、誰でもいいんですけど、頑張ろうと思ってもらえるような人、そういう存在になりたいと思ったので、被災したときだけじゃなく、その後どうなったのかも見てほしい。これからも頑張る予定なので」と前向きな姿勢を見せます。

そんな中島さんはメディアの取材を受ける一方で、実家の製麺所を復活させるべくクラウドファウンディングに挑戦。

見事、目標金額の3倍を集めることに成功し、新たな工場・店舗を建設。7月中の稼働を目指し、家族一丸となってオープンに向け作業しています。

中島さん自身、被災をきっかけに勤めていた会社を辞め、現在は都内にある製麺所で修行中。ゆくゆくは家業を手伝う予定だそうで、「製麺所というと昔の人がやっているイメージだと思うんですけど、新しい製麺所というか、今までに前例のないような製麺所にしていきたい」と夢を語っていました。

◆熱海を教訓に…日本全国で危険視される盛り土問題

現地取材を終えた堀は、「暮らしがそこにあって、暮らしが変えられてしまい、暮らしのなかで不便さを感じている人たちがいるということは、現場に来てみないと実感できなかった」と現地に住む方々に思いを馳せます。そして、「地域のみなさんの『なぜ?』、『どうして?』を、行政側が説明できないのであれば、説明するための発信をするのが我々の役割であり、調べ続けて発信し続けなきゃいけないと自戒しました」と気持ちを新たにします。

現在も土石流の全体像は定かではありません。その一端となっているのが、現土地所有者・旧土地所有者が責任を認めず、明快な回答をしていないこと。そのため、地域住民の間でも疑問だけが先行しているのが現状です。

また、第三者委員会が行った検証によれば、行政側の手続きに不備があり、規制も緩かったと指摘していますが、齋藤市長は遺族に申し訳ないという気持ちを示しつつも責任は認めていません。ただ、2006年からの任期中、違法な盛り土が問題視され、行政側も把握していたのは事実で、にも関わらず現場に踏み込めなかったのかという疑念があるのも確か。

さらに、中島さんも話していた防災体制、連絡体制の不備など、堀は山積する問題点を示唆するなか、「私が奮闘している様子を見てもらうことで誰かが頑張れるなら、私は復興の柱になりたいと決意して活動されている中島さんの姿には本当に胸が打たれた」と取材を振り返ります。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは「1年経った今も言えることが何もない市長の説明には正直驚いた」と呆れる一方で「違法な盛り土をやっていた業者の責任もあると思う」と指摘。

そして「それは熱海だけの問題ではなく、日本全国いろいろなところで(盛り土は)起きていて、これを教訓に変えないといけない業者、規制を入れないといけないところがあると思う。そこに目を向けるためにも、まずは熱海の総括が必要」と訴えます。

土砂災害の多い広島県で学生時代を過ごしたmicroverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは、高校の授業で地形図を見ながら、その危険性などを学んだことを引き合いにし、「最後は自分の命は自分で守らないといけないという視点もあると思っていて、例えば地形的に危ない地域から引っ越す、そうした場合の資金的な支援を行政がするような、未来への対応も改めて見直されれば」と別軸からの提言をしていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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