「何も異常なければ…」 カネミ油症次世代 五島で検診、認定基準見直し求め涙

油症検診には幅広い世代の被害者らが受診した。血圧を測定する年配の女性=五島市内

 カネミ油症事件の被害者の健康状態を調べる長崎県の本年度油症検診は12日までの3日間、五島市内であり、認定患者の子(2世)や孫(3世)ら健康影響の可能性が指摘される次世代の人たちも受診した。認定患者の孫で、初めて受診した10代の少女は「何も(異常が)なければいいと思う」と不安げに話した。
 同事件は1968年に発覚。油症の原因物質ダイオキシン類は母親の胎盤や母乳を通じ、子に移行する可能性が指摘されている。全国油症治療研究班(事務局・九州大)は、次世代被害者の救済に向けた医学的根拠を積み上げるため、昨年から子や孫への影響調査を開始。各地の油症検診も受けるよう依頼している。
 五島市内の50代女性は、70代の父、10代の娘の3世代で受診した。父母はカネミ倉庫の汚染油を直接摂取。女性は事件発覚から数年後に生まれた2世。子どものころから目立った自覚症状はなかったが、父母はがんを患い、母は既に他界。父は今も闘病中だ。
 この女性は「母乳を飲んで育った。そして私も娘に母乳を飲ませて育てたので不安がある」と明かし、「被害者の子や孫が病気になった時にきちんと補償を受けられるよう検討してほしい」と語った。初めて受診した3世の娘は「こういう検査をするんだなと思った。(今は)症状は特にない」と言葉少なに話した。
 別の50代女性は、80代の母と受診。同市奈留地区に住んでいた女性は事件当時は胎児。汚染油を直接口にした母ら家族も含めて未認定という。女性は子どものころから鼻血が出やすく、背中に吹き出物ができた。頻繁に発熱し首の痛みにも悩まされている。昨年初めて同検診を受けたが認定は見送られた。「体力がなく思い通りの生活ができない。元気になる薬がほしい。国は広く認めるよう認定の基準を見直してほしい」と涙を浮かべた。
 同検診は、同研究班から委託を受けた県が毎年実施。未認定患者については検診結果を基に認定の可否を審査される。2020年から新型コロナ対策で密集を避けるため、検診項目はダイオキシン類の血中濃度を測る採血など一部に絞り、対象も未認定患者に限定していたが今回、3年ぶりに認定患者も受け付けた。
 同検診は長崎市の県西彼保健所で8月25日実施。五島市の県五島中央病院では10月14、28日、同市の郡家病院、長崎市の井上病院では8~10月、予約して受けられる。問い合わせは県生活衛生課(電095.895.2362)。

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