国内で初確認、淡水二枚貝の化石に生息当時の帯模様 福井県勝山市の1億2千万年前の地層で発掘、福井県立恐竜博物館

模様が判明した(手前左から)トリゴニオイデス・テトリエンシス、マツモトイナ・マツモトイ、プリカトウニオ・ナクトンゲンシスのイメージ図(福井県立恐竜博物館提供、大西陽子さん作成)
模様が判明した(左から)トリゴニオイデス・テトリエンシス、マツモトイナ・マツモトイ、プリカトウニオ・ナクトンゲンシス(福井県立恐竜博物館提供)

 福井県立恐竜博物館(勝山市)は7月13日、勝山市北谷町杉山の約1億2千万年前(白亜紀前期)の地層で発掘した二枚貝の化石に、生息当時の模様が確認できたと発表した。淡水の二枚貝化石での確認は日本初で、世界でも2例目。系統が異なる現代の淡水域の貝類と同様の模様があり、別種の生物でも環境に応じて似た特徴を獲得する「収斂(しゅうれん)進化」が白亜紀前期に起こっていたと推察している。

 同日発表のオンラインの学術雑誌「サイエンティフィック・レポート」に掲載された。研究の中心となった博物館研究職員の安里開士さんによると、これまで模様が確認された淡水二枚貝化石は、ボスニアヘルツェゴビナの約1500万年前(中新世)の地層での1例のみだった。

⇒福井の地層に草食恐竜の連続足跡…国内2例目

 今回の研究は、2020年度調査で発掘した絶滅種「トリゴニオイデス・テトリエンシス」(幅30~50ミリ)と「マツモトイナ・マツモトイ」(同50~80ミリ)、「プリカトウニオ・ナクトンゲンシス」(同60~100ミリ)の3種で実施。岩から化石を取り出すクリーニング作業に砂粒を当てて削る機器「サンドブラスター」を本格導入し、化石表面の膜状の泥の層をはがすことが可能となり、いずれの化石でも横向きに走る帯模様などが見つかった。⇒模様をもっと見る

 ほぼ同じ模様は、この3種と系統が違う「イシガイ」などの淡水域の現生貝類にも見られる。安里さんは「鳥類と(哺乳類の)コウモリの羽が同じように進化したように収斂進化をした事例ではないか」と説明。要因として「藻が発生するような淡水の環境に応じ、捕食者からカムフラージュするためではないか」と指摘している。

 模様が確認された3種の化石は7月14日から県立恐竜博物館で展示する。

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