止まらない物価高騰の波 値上げに踏み切った手作りパン店のケース

あらゆるものの値段が上がっていて、物価高騰への対策を求める声がさまざまな業界から上がっています。手作りパンを販売する広島・福山市の店では今月、開業以来の大幅な値上げに踏み切りました。

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福山市曙町にある「パンマルシェ キュイキュイ」です。ことし、開業10年の節目を迎えました。

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手作りの菓子パンに惣菜パン、サンドイッチなど、およそ60種類を販売していますが、今月からほぼ全ての商品を値上げすることに…。

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理由は、やはり「材料費の高騰」でした。店の責任者・伊藤由美子さんは、複雑な心境です。

パンマルシェ キュイキュイ 伊藤由美子さん
「ああ、上がるのかというショックはあったんですけど、とうとう、うちにも来たかなという印象はありました」

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キュイキュイでは、海外産の小麦粉などが原料のパン生地を大手食品メーカーから取り寄せています。パン生地の仕入れ値が上がったのは、今回が、ことし初めてではないそうです。

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伊藤由美子さん
「4月も価格が上がったんですけど、1つの商品の容量・内容量をちょっと減らすということが1回あったんですけど」

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春先に1回目の価格高騰の波が押し寄せましたが、店では販売価格を変えずに乗り切っていました。しかし、5月に再び、仕入れ先から7月分以降の価格改定の知らせを受けました。

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伊藤由美子さん
「4月に上がったのに、また7月に2度目の値上がりがあるのかという、ちょっとこのたびはどうにもならないなというので、はい…」

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▽開業当初から価格を維持していた「くるみぱん」は119円から130円に、▽ボリューム満点の「海老カツバーガー」は26円値上げの350円に変えました。先月に比べ、ほぼ全ての商品を3%から10%値上げしました。

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伊藤由美子さん
「袋であるとか、いろんなものの包材、マヨネーズであるとか、カレーパンやドーナツを揚げる油も上がっていますし、チーズやパンの上に塗るシロップとか、本当に全てのものが上がっている状況です」

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生地だけでなく、具材など、パンに使うあらゆるものの仕入れ値が上がり、苦渋の決断でした。先行きが見通せない中、伊藤さんは、客足が遠のくのではないかと不安を口にします。

伊藤由美子さん
「高ひん度に来てくださるお客さんもいらっしゃるので、あまり高価格になってしまうと…」

キュイキュイは、地元の社会福祉法人が運営する就労継続支援事業所でもあります。障害がある人も一緒に働いていて、賃金の一部は店の利益から支払われています。

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伊藤由美子さん
「支出が増えてくると、利用者さんへ工賃(賃金)の還元がかなりできなくなる、反映ができなくなってしまうので、かなり厳しい部分ではあります」

この日は、コロナ禍で延期していた「周年祭」の初日…。開店直後から多くの客が訪れました。

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常連客
「惣菜が上に載っているパンが好きなんです」

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店内には、パンやサラダが食べられるカフェが併設されています。人気なのが、90分間のパン食べ放題メニューです。ドリンクなどを注文すると利用できます。食べ放題の料金は、これまで550円でしたが、今月から620円に…。カフェメニューも全て、値上げしました。

常連客たち
「安いのが、そりゃあいいのはいいですけど…。仕方ないですよね」

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「企業努力も限界が来ているんじゃないかなと感じますね。自然とね(財布のひもが)締まってくると思いますよ」

店では、食材や包材のロスを減らしたり、節電したりするなど、「こまめな経費削減」を積み重ねています。

パンマルシェ キュイキュイ 伊藤由美子さん
「やりがいを持って作業ができるように全員で協力していきたいと思います。飲食店やほかのいろんな事業所もみなさん、努力されていると思いますので、そういったところに何か還元といいますか、支援といいますか、何かあればうれしいです」

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物価高騰の波はいつまで続くのか…。暮らしに寄り添った実効性のある対策が求められています。

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