<金口木舌>暴力に屈するな、冷静さ失うな

 1789年の今日、フランス・パリのバスティーユ牢獄を市民が襲撃し、フランス革命が始まった。「自由、平等、博愛」をスローガンとした革命は、人権宣言などを実現し人類史に大きな足跡を残した

▼半面、革命後には恐怖政治が行われ、数万人が犠牲になったとされる。恐怖を意味する「テルール」という仏語から、政治的目的のために暴力を用いるテロの概念が生まれた

▼8日、安倍晋三元首相が凶弾に倒れた。動機は政治的な目的ではないとされているが、どんな理由でも暴力で問題を解決しようとすることは許されない

▼参院選では改憲勢力が国会発議に必要な3分の2以上を維持した。岸田文雄首相はできるだけ早く発議に至るよう取り組むとしたが、有権者が最も重視したのは経済政策だ。単純に改憲へのお墨付きが与えられたとは言いがたい

▼「安倍氏の遺志を継ぐ」の声の下、改憲論議を拙速に進めては必ず将来に禍根を残す。非業の死を深く悼むと同時に、真の意味で暴力に屈しないためにも、冷静さを失わないようにしたい。

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