「必死」と「必至」の違いって?【正しい日本語解説Vol.7】

社会人になると、新しい言葉を使う機会が増えますよね。使い慣れていない言葉を無理に使い、大事な場面で恥をかいてしまった……。なんていう人も少なくないのでは? そこでTABIZINEでは、知っているようで意外と知らないビジネスシーンの頻出ワードを徹底解説! 今回は、「ひっし」と読み方が同じで、違いがわかりにくい「必死」と「必至」について、日本語に関する著書も多数手がけている、国語講師の吉田裕子さんに解説してもらいます。

「必死」の意味

「必死(ひっし)」は、必ず死ぬこと。また、そういう状況や場面のこと。生きる見込みがない、というニュアンスもあります。

さらに、必死には、必ず死ぬという覚悟をして全力を尽くすこと、死にものぐるいという意味もあります。ただしこの場合には「マラソン大会で必死にラストスパートをかける」という文のように、本当に命をかけているわけではなく、持てる力のすべてで、全力で、という意味合いで使われることもあります。

将棋の世界では、次に必ず王将が詰んでしまう状態やそのさし手のことを必死といいますが、こちらはしばしば「必至」とも表記されます。

【例文】

爆弾を積んだ戦闘機で敵の戦艦に体当たりする、必死の作戦。

必死に勉強した結果、試験に合格した。

「必至」の意味

「必至(ひっし)」は、必ずそうなること、必ずそのことがやってくること。また、そういう状況や場面のこと。どうしてもそうなってしまう、そうなることを避けられない、というニュアンスもあります。

【例文】

台風が直撃したら、電車が遅延するのは必至だ。

参考:コトバンク

「必死」と「必至」の簡単な覚え方

「必死」と「必至」を覚えるには、結末に注目してみましょう。

「必死」は必ず死ぬと書きます。結末は、死ぬことです。そこから「必ず死ぬ」「必ず死ぬという覚悟で全力で挑む」と連想しましょう。

「必至」は必ず至ると書きます。結末は、何かに至ることです。そこから「必ずそうなる」と連想しましょう。

【クイズ】適切なのはどっち?

○○で働き、借金を返済する。

近くのラーメン屋は行列○○の人気店だ。

【答え】

1→必死

2→必至

1の正解は必死。借金を返済するために死にものぐるいで働いているので、「必死」が適切です。

2の正解は必至。人気店で必ず行列ができるという意味の文章にしたいため、「必至」が適切です。

監修:吉田裕子先生

国語講師。都内大学受験塾・カルチャースクールで講師を務める他、書籍執筆、講演、企業研修、三鷹古典サロン裕泉堂の運営などの活動に取り組んでいる。NHK Eテレ『知恵泉』、NHK‐FM『トーキングウィズ松尾堂』など、テレビ・ラジオにも出演。著書に『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)や、『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)など多数。

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