<南風>地域と共に

 創業者が1979年アメリカ仕込みのドーナツやチョコレートケーキ、アップルパイをできたてで販売する小さなお菓子屋さん「ポルシェ洋菓子店」を創業した。夢は、いつの日か、お菓子の城を造りたい!屋号は「御菓子御殿」。

 一、十、百、千、万、十万、百万と数えないと数字が読めなかった若かりし頃の私は約5年間その夢と資金繰りを聞いていた。2001年、地元の人も観光客もよく通る国道58号沿いで青い海と白い砂浜の沖縄らしいロケーションに沖縄のシンボルである守礼の門や首里城正殿をほうふつさせる「御菓子御殿」が完成。壮大な夢を本当に実現させた。本音、偉大すぎて怖かった。ところがオープン3カ月後、米中枢同時テロで沖縄観光は落ち込んだ。そして現在、いまだ収束しないコロナ禍を経験している。

 自粛のためにお客さまに来てほしいとは言えない。暗い店舗で行儀よく並んでいるお菓子を見ているだけで悲しくなった。そんな時、「観光客減 土産品危機 県内で消費を」の見出しで新聞に掲載されると、地元のお客さまが買いに来てくれた。その光景に感謝で涙があふれた。同時に地域と共に歩んできた創業者の思いを大切に地域に求められる企業にしなければと心を奮い立たせた。2年半、いろんな思いが頭を巡り、乗り越えなければならない壁がたくさんあったが立ち止まっている場合じゃない。

 何ができるか?何をするか?を考えた。DINO恐竜PARKと沖縄歴史民俗資料館のリニューアル、国際通り松尾店にカフェゆくら、恩納店に海の見えるワーケーションをオープン。社員と一緒に自分たちができる範囲でお客さまに喜んでもらえる店舗づくりをしてきた。一緒に乗り越えてきた社員と支えてくれたお客さま、家族、地域に感謝しながらこれからも歩んでいきたい。

(澤岻千秋、御菓子御殿専務取締役)

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