名作映画ロケ地、取り壊しへ 足利・松村写真館で最後のイベント

25日に取り壊しが始まる松村写真館

 1924年完成で、名作映画のロケにも利用された松村写真館(足利市大門通)の取り壊しを惜しむ市民有志が15~24日、館内見学や、同館に残る明治~昭和期の歴史的な写真約100枚の展示会を開く。築100年近い木造モルタル2階建ての建物は老朽化のため、25日に取り壊しが始まる。美しい歴史的建造物が残る大門通りの象徴的存在の同館にとって、イベントが最後の花道となる。

 同館は1893年創業。4代目の松村隆一(まつむらりゅういち)店主(60)は「東日本大震災後、雨漏りが始まるなど老朽化が目立ってきた。風水害や地震が増えているので、悩んだ末に取り壊しを決めた」と話す。

 これを聞いたアパレルメーカー社長鬼久保綾子(おにくぼあやこ)さん(37)=通3丁目=らが松村店主と相談し、館内の見学や、市内で撮影された農村や工場などの同館所蔵の古い写真の展示について協力を取り付けた。

 鬼久保さんは今も繊維産業が息づき、古い建物が残る足利に魅力を感じ、今年1月に東京から移住した。「松村写真館の保存が難しいことが分かり、何かしたいと思った」と話す。写真展は同館向かいの土産物店「足利叢(そう)林」で開催する。

 同館では第35回日本アカデミー賞で10冠を獲得した井上真央(いのうえまお)さん主演の名作「八日目の蝉(せみ)」(2011年)の撮影が行われた。松村さんは「公開後はロケ地巡りで訪れる人がすごかった」と懐かしんだ。

 同館の撮影業務は、取り壊しが始まる直前の24日午後3時まで続けられる。

 (問)鬼久保さん090.7004.2025。

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