ロッテ益田直也「信念を持って1年間やる」ルーティンとは? 五十嵐亮太も驚く“特殊”な自己管理術

スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。この春からはJFN33局ネットの全国放送にリニューアル。元プロ野球選手の五十嵐亮太、スポーツキャスターの秋山真凜、Webメディア「REAL SPORTS」の岩本義弘編集長の3人がパーソナリティーを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。今回は、ゲストに千葉ロッテマリーンズの益田直也が登場。プロ11年目を迎えても存在感を増し続ける守護神としての信念、そして五十嵐も驚く意外なトレーニング法とは?

(構成=池田敏明、写真=Getty Images)

疲れていてもルーティン順守。肩は10球でつくれる

秋山:ゲストは千葉ロッテマリーンズの益田直也選手です。

五十嵐:益田選手は守護神として活躍しています。クローザーとして心掛けていることはありますか?

益田:シーズン中は調子に波があるのですが、いい時も悪い時も変えないことですね。自主トレからつくってきたものを崩さず、信念を持って1年間やるようにしています。

五十嵐:試合前のルーティンはあるんですか?

益田:はい。練習メニューは火曜日から日曜日まで全部決めているんですけど、疲労がたまっても「疲れているからこれはやらない」とはせず、決めたことはすべてやっています。

五十嵐:夏に向けて、これからちょうど疲れがたまってくる時期じゃないですか。それでもずっと同じメニューをこなすんですか?

益田:僕は疲労がたまってくるのが開幕から1カ月後ぐらいなので、この時期が一番、楽になってくる感じですね。

五十嵐:それはすごいな。試合中に肩をつくるタイミングもすべて同じパターンですか?

益田:全く一緒ですね。

五十嵐:すごいな~。中継ぎや抑えの人って、試合前に肩をつくるための球数がそれぞれ違うんですが、益田選手はブルペンでキャッチャーを座らせてから試合に向かうまでの球数はだいたいどれぐらいなんですか?

益田:ホームの試合だと、8回裏の攻撃が始まってからキャッチャーに座ってもらってつくります。例えば攻撃が5球で終わってしまうと自分の球数がかなり少なくなってしまうので、そこでの球数は決めていなくて、攻撃の時間に合わせながらつくっています。

五十嵐:だいたい何球ぐらい投げればつくれます?

益田:10球ですね。

五十嵐:いいですね~。これ、けっこう大事なんですよ。

秋山:五十嵐さんは何球ぐらいだったんですか?

五十嵐:僕もだいたいそれぐらいですね。なるべく無駄球を減らしてシーズンを乗り切りたいので。でも、抑えだと自分が投げるシチュエーションが決まっているので、比較的、無駄球は省けますよね。

岩本:抑えと中継ぎでは準備の仕方が違うということですね。

益田:はい。中継ぎはいろいろな展開の中で臨機応変に投げなければいけないので準備の回数も多く、球数は少し増えると思います。

クローザーであり、ムードメーカーの役割も

五十嵐:ブルペンの雰囲気ってチームによっていろいろあると思うんですけど、千葉ロッテのブルペンでムードメーカー的な選手はいるんですか?

益田:自分で言うのもあれなんですけど、僕自身がそういうタイプだと思います。

五十嵐:やっぱり。これ、どこのチームもそうなんですけど、抑えがけっこうそういう雰囲気をつくってくれるんですよ。ちなみに益田選手は他の選手とどういう会話をしているんですか?

益田:選手によって緊張する人、明るいまま送り出してほしい人といろいろあるので、ブルペンでつくっている選手、待っている選手を見ながら臨機応変にやっています。

五十嵐:選手の性格を知ったうえでそういう対応をしているんですね。

益田:僕自身はうるさくされても大丈夫というか、けっこう明るいので、みんな僕寄りになってきて、ブルペンはいつもけっこううるさい感じです(笑)。

岩本:それっていいことですよね。

五十嵐:いいですね。暗いチームだと、試合を淡々と見ながら「そろそろ準備しようかな」みたいな感じなんですよ。もちろん野球の会話もしていますよね?

益田:ほぼ野球の会話ですね。打順の話や、今日はこの選手が打っているねとか、相手のどのバッターに対して投げるのかとか、そんな話をしています。

岩本:ブルペンの中で特に仲がいい選手、よく話す選手はいるんですか?

益田:全員と仲良くやらせてもらっています。

岩本:この役割は素晴らしいですよね。

五十嵐:大きいですよ。ブルペンにそういう人がいればメンタル的に落ち着きますし、試合に挑む時のペースもつかみやすいんですよ。以前、チームの誰かがその役割を担っていて、それを受け継いだんですか?

益田:1年目の時に、「昔は違う雰囲気でやりにくかったから、もっと明るい雰囲気でやりたい」と先輩方が言っていたんですよ。それを聞いたうえで、自分はこうしていこうと思い、今はその形でやらせてもらっています。

五十嵐:前とは違う雰囲気をつくったということですか?

益田:そうですね。少しピリピリした雰囲気があったみたいで、それは若い子には厳しいかなと。ブルペンにいる時間はけっこう長いので。若い子が試合でうまくパフォーマンスできるような雰囲気がチームにとって一番大切なので、僕らがそれをつくれるように心掛けています。

秋山:1年目でそれを感じて、実際に行動に移せるのはすごくないですか?

五十嵐:自分のことをやりつつブルペン全体のバランスを見なければならないので大変ですが、チームにとって必要なことだし、ブルペンにとってありがたい存在ですよね。

ピンチの場面を想定しながらマウンドへ

五十嵐:バッターに対する配球は、シーズン中に大胆に変えることもあるんですか?

益田:調子がいい状態で投げられるのってシーズンで数試合しかないので、基本的にはその日のバッターや自分の状態を見て、うまくかわす感じで投げることのほうが今は多いです。

五十嵐:試合で投げている時のシチュエーションを頭の中で一通り整理してから投げると聞いたことがあるんですけど、今もそうやってマウンドに上がっているんですか?

益田:はい。基本的にはノーアウト一、三塁とか、ワンアウト二塁とか、そういうシチュエーションを考えてからマウンドに行くようにしています。

岩本:五十嵐さんはどうだったんですか?

五十嵐:僕は楽な状況しか考えなかったです(笑)。その場その場でポジティブに考えつつ、ちょっとピンチになると先を見ながら、という感じで対応していました。

岩本:益田選手がピンチの場面を想定するようになったのは、どういう理由からなんですか?

益田:実際にそういう場面で登板してバタバタしてしまうことがあったので、そうならないための方法ですね。「頭の中で整理してきたから大丈夫だ」と言い聞かせてから投げるので、ポジティブに捉えている感じです。

五十嵐:野村監督(故野村克也氏)も同じようなことを言ってたな~。食事やトレーニングも含めた生活面はいかがですか?

益田:食事は全く気にせずに毎日取っています。ただ、体重はプラスマイナス500gの範囲内でキープするようにしています。

秋山:ストイックですね。

五十嵐:500gはすごいな。シーズンを通して、その範囲内の増減だけで終わらせることができるということですか?

益田:ほとんど変わらないですね。

秋山:それはいつから意識されているんですか?

益田:ここ5年ぐらいは、体重は1年間変わらずに過ごしています。

五十嵐:体質的に太りやすいとか痩せやすいはありますか?

益田:増やそうと思えばすぐに増やせますし、減らそうと思えばすぐに減らせます。炭水化物を多めに取ると太ってしまうので、そこは多少我慢して、夜はお米を食べないようにしています。

五十嵐:お酒は?

益田:お酒は飲みます。シーズン中は程よく、(オフシーズンに)飲める時はそれなりに(笑)。

シーズン中もランニングのハードトレを実施

五十嵐:トレーニングはどうですか? ウエイトトレーニングをやるほうなのか、それとも違うトレーニングをするのか。

益田:僕、ウエイトトレーニングは一度もやったことがないです。筋肉がつきやすい体質で、すぐに自分のイメージとは違う感覚になってしまうので。体幹トレーニングと自体重のトレーニングとランニングで1年間、過ごしています。

五十嵐:自重トレーニングだけでも筋肉には十分に刺激がありますからね。あとは投げて体力をつくるというところなんでしょうけど。

益田:はい。基本的には下半身はランニングで鍛えています。

五十嵐:シーズン中は瞬発系の練習が多くなると思いますが、有酸素運動も入れるのですか?

益田:瞬発系は少なめで、きつめのランニングを多く取り入れているんですよ。火曜日、水曜日、金曜日、土曜日の4日間は長い距離をたくさん走って、木曜日と日曜日だけ瞬発系に切り替えてやっています。

五十嵐:面白い! 長い距離はPP(レフトとライトのポール間)とかPC(ポールからセンターまで)という感じですか?

益田:そうですね。火曜日と金曜日はPPとPCを10本ぐらいずつ、8割から9割ぐらいの力でスピードを出してやります。休憩も少なめで。水曜日と土曜日はPCを12本から20本ぐらいやってからダッシュをする感じです。それが持久系で、最後に短ダッシュは毎日入れます。

五十嵐:それを年間通してやるんですか? 野球選手にとってはけっこうヘビーですよ。最近、若い選手はランニング量が減ってきているんですよね。ロッテの選手がみんなやっているわけではないですよね。

益田:自分だけ別メニューです。

五十嵐:それを何年間やり続けているんですか?

益田:2年目からなので、もう10年ぐらいやっています。

五十嵐:投げ込みはさすがにしないですよね?

益田:練習ではキャッチボールもしないです。

五十嵐:聞けば聞くほど特殊! どういう意味ですか?

益田:調子が悪い時に遠投はするんですけど、それ以外の時は、練習ではボールは握らないです。

五十嵐:これはすごいですよ。野球選手ってピッチャーと野手で分かれてウォーミングアップをして、そのあとにみんなでキャッチボールをするんですけど、その時に益田選手はやらないということですか?

益田:はい。その時にランニングが始まります。

五十嵐:2年目でそれに気付くのは早いと思うんですけど、どういう流れでそうなったんですか?

益田:考え始めたのは1年目のオールスターゲーム明けですね。僕はそれまでのキャリアでもランニングを重視してやってきたので、それをトレーニングコーチと相談しました。1年目の途中に疲労がたまってきたので一度ランニングをやめてみたんですが、そうすると逆にパフォーマンスが落ちてしまって。そこで相談して「これからはこうします」とやってみたところ乗り切ることができたので、2年目からも続けています。

五十嵐:例えば前日の試合で自分のピッチングで何かおかしいと感じた時に、ウォーミングアップ後のキャッチボールで調整したいと思うピッチャーも多いと思いますが、そういう不安もないということですか?

益田:ないですね。それはブルペンでやります。ちょっと早めにキャッチボールを始めたり、試したいボールがある時には立ち投げの時にキャッチャーに「これを投げるから」と伝えたりします。

五十嵐:不安を消し去りたいためにキャッチボールで多めに投げてしまう人って多いんですよ。それが結果的に疲労やケガにつながっていくんですが、そこをしっかり割り切ってやるのはすごく勇気がいることだと思います。

タイミングを外す「ふらつきピッチング」

岩本:昨年、足を上げ、バランスを崩しそうになってから投げる“ふらつきピッチング”がYouTubeチャンネル「(パーソル・パ・リーグTV公式)PacificLeagueTV」でも「絶対に笑ってはいけない“新投法”」というタイトルで200万再生を超えるなど大きな話題となりました。あれはなぜ試そうと思ったんですか?

益田:基本的に打者のタイミングをずらすようなフォームで投げているんですけど、西川遥輝選手(当時・北海道日本ハムファイターズ/現・東北楽天ゴールデンイーグルス)や近藤健介選手(北海道日本ハムファイターズ)など選球眼のいいバッターの場合、あんな感じで投げると基本的に見逃してくれるんですよ。最初は西川選手に対してだったんですけど、やってみたら見逃してくれたので、「使えるな」という感じで。

五十嵐:本来のフォームも足の上げ方がすごく特徴的ですよね。足を上げて、膝でツークッションぐらい入れながら体重移動するじゃないですか。そのタイミングも変えられるんですか?

益田:変えています。ゆっくり上げたり、少しクイックで上げたり。クイックで上げて、そこから前に重心移動する時の間を長くしたり。

五十嵐:それもできるんだ。すごいな。日本のバッターはタイミングを計りながら打つバッターが多いので、いろいろやってタイミングをずらせば、気持ちのいいスイングをさせなくすることができますよね。

岩本:ふらつきながらめちゃくちゃいいボールが行くので、手が出ないですよね。

五十嵐:ただ、自分のタイミングもずらさなければいけないので、メリットだけではないと思うんですよ。それはありますか?

益田:足を上げている時は正直、どんなタイミングでもいいんですよ。前に重心移動していく時の股関節のハマり具合というか、右足の股関節に乗った感じがちゃんとしていれば、足を上げている間のことはあまり気になりません。

岩本:こうやってお話を聞くと、試合で一球一球すべて見たくなりますね。どうずらしているのか。見る楽しみが増えました。

秋山:まだまだシーズンは続きますから、注目したいですね。

五十嵐:応援しています。ちなみに僕、今シーズンはロッテを優勝候補にしているので、予想が外れないようにお願いします!

益田 はい、全力で頑張ります!

<了>

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