【おんなの目】 お好きにどうぞ

 私は、今まで手紙の末尾を「元気にお過ごしください」と結んでいたが、これ間違い。ジェーン・スー氏のエッセイ『ていねいな暮らし』の中に、k雑誌からの引用文があった。“朝は早めに起き、朝食の前に古着をリメイクした雑巾で、さっと拭き掃除を済ます。一汁二菜の質素な食事を用意している間に、夕食の魚を下ごしらえしましょう。物質的な豊かさよりも、精神的に豊かになることを尊び「きちんと暮らすこと」。毎日をきちんと暮らすのです。「過ごす」のではありません。「暮らす」のです”。 

 スー氏は、「過ごす」派でこの文の末尾はこう結ばれている。“ていねいな暮らしは、他の人に任せます”。私も同感。雑巾は、旧くなったタオルをそのまま縫わないで畳んで使う。場所によっては、その雑巾で足を使って床を拭く。魚はスーパーで切り身を買うことが多い。

 私は精神的豊かさが生きていくのに必要なことは知っている。又、物質的豊かさに支えられる精神の豊かさがあることも知っている。私の物質的欲望は小さなものだが、それが満たされた生活が快適であることもわかっている。各人好きなようにすればいいのだ。しかし、手紙の末尾は「お暮らしください」に改めようと思う。「過ごす」と「暮らす」の違いを知ってしまったもの。

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