パトカー緊急走行 特別な訓練に密着 「機動警ら官」 高度な運転技術とは

サイレンを鳴らしながら事件や事故の現場に急行するパトカー…。警察官なら誰でも運転できるわけではないんです。高度な運転技術を身につけた「機動警ら官」。その特別な訓練に密着しました。

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スラロームで走る複数のパトカー。並べられたコーンの間を縫うように走るパトカー。「機動警ら官」と呼ばれる警察官の「緊急走行」の技術を磨く訓練は、11日間、泊まり込みで行われました。

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まわりの車の動きを抑えてスピードを上げる緊急走行。逃走する犯人や自分が事故を起こす危険性もはらんでいて、第三者を巻き込むことも許されません。パトカーを運転する警察官には、高度な技術が必要になるのです。

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訓練生12人の中で最年少の太田陽平 巡査(23)です。高校卒業後に警察官になり、交番などで勤務した後、ことし4月、念願の「機動警ら官」に任命されました。

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広島南警察署 機動警ら官 太田陽平 巡査
「わたしはまだ自分の運転に手いっぱいで、もっと運転に自信と余裕をもって、そして目線を遠く、すぐに危険なことを見つけられるような技術を身に付けたいなと思っております」

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太田さんがそう話す理由は、パトカーの種類にありました。実は、こちらのパトカーは、「機動警ら官」だけが運転を許されています。

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交番勤務で運転する通称「ミニパト」よりも車体が大きいため、運転技術が問われるのです。

訓練では複雑なコースを走ります。

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120メートルにわたってコーンの間を縫って走る「スラローム」のあと、鋭角の方向転換やクランクの連続。最後はクランクから出た直後にコーンの間を通り抜ける狭路で終わります。

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目標は、このコースを4分以内に走破すること。

太田巡査の指導をするのは、県警に2人しかいない「緊急走行」の技能指導官・阿部警部補(43)です。

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運転しているときの目線や姿勢、ハンドルのさばき方、1つひとつの動作を細かく指導していきます。

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広島県警 技能指導官 阿部響 警部補
「今ので4分10秒、ミスが2つ。気持ち的には? だいぶスピード上げて、7割、8割?」

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太田陽平 巡査
「8割…」

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阿部響 技能指導官
「8割? 8割で4分10秒となると、気持ち的には2割か3割かはほしいくらい。速度が足らんなと思って、クランクの中でアクセル踏んだじゃろ。あれ、ダメ。速度は手前で作っておいてコーナーリングしていって、終わって、その立ち上がりでやっとそこでアクセルを踏むという感じじゃないと安定感がなくなる」

RCC

太田陽平 巡査
「全然、遅いタイム。たぶん今、最下位ぐらいのタイムです」

阿部響 技能指導官
「やばい、追いついてしまう。しっかり手前で減速…」

RCC

阿部指導官は、コースの走り方を説明しながらでもノーミスで3分40秒で走り切りました。

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幅2.5メートルのカラーコーンの間をジグザクに通る「狭路訓練」です。幅1.9メートルのパトカーで連続して通るのは至難の技です。

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阿部響 技能指導官
「しっかり寄せる。しっかりギリギリまで寄せて。まだ早いやろ」

厳しく指導する阿部指導官ですが、若いころ、追いかけていた車が建物にぶつかる事故を起こしてしまったこともあったそうです。

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追跡する側もされる側も事故のないことが何よりも大切さだといいます。

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阿部響 技能指導官
「追うべきときは追うが、やめるべきときはやめるという、そういった判断を専科生には学んでもらって、現場で生かしてもらえたらなと思っています」

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広島南警察署 太田陽平 巡査
「運転席に座って、カラーコーンを見ようと思っても見えないんですね、全然、見えない。甘かったなと思いますね、自分の考え方が」

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訓練も大詰め、試験コースでのテストです。太田さんも緊張しています。

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太田陽平 巡査
「朝もすごく早く起きてしまったので、やっぱりどうしてもいつどおりにはいかない部分があるので、そこをどううまくやっていくか。完璧にできるようには練習してきたと思うので、がんばりたい」

太田さんの順番は最後でした。練習ではコーンを飛ばしてしまったスラロームもノーミスでクリア。順調に走行しているように見えます。

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しかし、最後の狭路への進入でいったん後退が必要に…。時間を使ってしまいました。タイムはどうだったのでしょうか?

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広島県警 技能指導官 阿部響 警部補
「4分19秒ですね。惜しかったというか、もうちょっと、ぐっと加速をできるところでしっかりしてもらったらクリアできたかな。当てたくないという気持ちがあるので、ただ、それはあくまで当てないのが一番。最後の狭路のところでも1回切り返ししましたね。あれもすごく良い判断です。あのままいったら当たるわけですから、しっかり冷静に1回下がって、切り返して、ああいうのが一番大事なところなんです」

RCC

太田陽平 巡査
「くやしいです」

阿部響 技能指導官
― いいところも?
「本当、そうですよ。今、6人見た中でハンドルさばき、一番です」

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11日間に及ぶ訓練が終わりました。

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最後の試験では目標タイムに届かなかった太田さんですが、自分の弱点と、なによりも事故なく走行するという「機動警ら官」として一番大切な心を学びました。

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広島南警察署 機動警ら官 太田陽平 巡査
「これからはメンタル面もしっかり鍛えていって、スピードを出したとして、いつもどおりの安全な運転ができるように努力していきたいなと思っています」

冷静な判断ができるように…。太田さんは、「もっともっといい警察官になれるようにがんばりたい」と話していました。

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