8年の切磋琢磨が生んだ2人の“最強ウォーカー”池田向希と川野将虎 静岡から世界の頂点へ 世界陸上オレゴン開幕

7月16日(日本時間)「世界陸上オレゴン」がいよいよ開幕する。世界記録保持者や五輪メダリストが集結する陸上の祭典で、日本勢のメダル獲得が期待されるのがいまや“お家芸”ともいわれる競歩。中でも注目を集めるのが、旭化成所属の池田向希選手(24、浜松日体高卒)と川野将虎選手(23、御殿場南高卒)。静岡ゆかりの同い年が世界の頂点へと挑む。

静岡から世界の頂点を狙う川野将虎(左)と池田向希

2021年夏、日本中を熱狂させた東京五輪。札幌を舞台に行われた20キロ競歩で銀メダルに輝いたのが池田だ。最高の舞台で表彰台に上った池田だが、どうしてもリベンジしたい舞台がある。それが世界陸上だ。

猛暑のカタールで開催された前回大会。山西利和(26、静岡西豊田小卒)が優勝を飾る中、世界陸上初出場の池田は6位。悔しさが残った。

池田向希

「過酷な状況や予想していなかったレース展開で何もできなかった。正直悔しかった」

痛感した、世界との差。その差を埋めるために取り組んだのが武器であるスピードのさらなる強化だった。

専門の20キロよりも短い距離のレースに積極的に挑戦すると持ち味である足の回転数にも磨きがかかり、2020年には5000mで日本記録を樹立。そのスピードが東京五輪銀メダルにも繋がった。

池田向希

「磨き上げたピッチやスピードを20キロでも存分に生かしたい。3年経ったオレゴンの地で成長した姿を見せてメダル争いに加わりたい」

持ち味のピッチに磨きをかけ五輪に続く表彰台を狙う池田

一方、世界陸上初出場となるのが新種目の35キロ競歩代表の川野だ。

川野は50キロ競歩の日本記録保持者でありながら、20キロのタイムも日本歴代3位。そのスピードを生かし、東京五輪では、体調不良に襲われながらも日本人最高となる6位入賞を果たした。

川野将虎

「他の選手にはないスピードを持っているのでそこを世界陸上までに強化して戦える準備をしていきたい」

同い年の川野と池田は東洋大から同じ実業団の名門・旭化成へと入社。専門とする種目は違うものの、良きライバルとして切磋琢磨してきた。

前回の世界陸上、池田が日の丸をつけて戦う中、出場が叶わなかった川野。静かに闘志を燃やしていた。

川野将虎

「スピードは池田がすごいものを持っているので練習量だけでも池田に勝たないと上にはいけないと思っている」

その練習が実を結ぶ。世界陸上の1か月後に行われたレースで川野は50キロ競歩の日本記録を樹立。池田よりひと足先に東京五輪出場を決める。

この活躍に今度は池田が奮起。川野のレースから刺激を受けたと最後の東京五輪選考レースで優勝。2人揃って夢舞台への切符を手にした。

池田向希

「自分に足りなかったものが川野にはあった。いままで取り入れてこなかった練習も取り入れて力がつけられた。川野には本当に感謝している」

50キロの日本記録を樹立し五輪出場を決めた川野=2019年撮影

池田と川野、2人のライバル物語は8年前までさかのぼる。

競歩と出会ったのは、ともに静岡県内の高校に通っていた1年生の時。奇しくも、ともに恩師から「長距離からの転向」を勧められてのことだった。

初めて出場したレースで「後ろから2番目の選手の周回遅れというダントツ最下位だった」と苦笑いする川野だったが、ここから一気に頭角を現す。

高校2年で出場した和歌山での全国高校総体で銀メダルに輝くと、翌年のインターハイでも銅メダル。年代別の日本代表にも選ばれ、世界を経験した。

一方の池田、高3の静岡県高校総体では、川野に2分半以上の差をつけられての2位。インターハイでは5位入賞を果たしたが、川野に及ばなかった。

「追いつけ、追い越せ」

互いを良きライバルとして認め合い、切磋琢磨することで、気が付けば、2人は世界を代表するウォーカーへと成長していた。

高校時代から切磋琢磨してきた川野(写真右)と池田(中央)=2016年撮影

川野将虎

「2019年の世界陸上に池田が出場して、僕はその時出場できなかったのであこがれていた大会。ベストパフォーマンスが出せるように頑張っていきたい」

池田向希

「ドーハ大会では悔しい思いをしたのでそのリベンジを果たしたい」

互いに高め合い、成長してきた二人。

更なる高みを目指す先にメダルという結果が待っているはずだ。

互いの存在が互いの成長を促した

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