<金口木舌>多様な意見

 「民主主義は多数決だ」。高校生の頃まで単純にそう考えていた。多数派の思い通りに進めていれば、少数意見は排除してもいい。そう信じていた

▼だが、多数派の意見が必ずしも正しいとは限らない。先の大戦では多くの国民が「お国のために」と戦争遂行を支えた。3.11までは原発の「安全神話」に大半の国民が翻(ほん)弄(ろう)された。過去の事例からも明らかだ

▼10日に投開票された参院選。比例代表は小規模政党が躍進した。特に沖縄は、れいわ新選組や参政党、NHK党を含む小規模の5党・団体の得票率が47都道府県で最も高かった

▼選挙区にも影響を与えた。参政党候補者はほぼ地盤がないにもかかわらず、2万2500票を獲得。上位2氏の得票には及ばないが、激戦を生み出した一因とみられている

▼小規模政党が生まれ、多様な意見が反映されれば国会の潤滑油になるだろう。だが、一部の党が掲げる政策には偏った内容や少数者を排除するような主張も散見された。なぜ票が集まったのか。分析と今後の動向を注視する必要がありそうだ。

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