認知機能低下、歩行速度と相関。花王が発見、セルフチェックツールでフレイル予防

 人生100年時代と言われる。厚生労働省の「令和元年簡易生命表」によれば、90歳以上の女性は51%を超えており、男性では27%超と4人に1人以上となっており、85歳以上生きる日本人男女は半数を優に超えている。健康寿命が唱えられる所以だ。多くの人々は自活できる状態を維持する健康寿命に強い関心を持っている。自活生活を維持するには、何と言っても足腰の健康が必要だが、70歳以上の高齢者になると歩行速度が急激に低下するという。また、足腰が弱くなり運動能力が低下すると、急激に認知機能が衰えることは古くから指摘されて生きたことだが、歩行力と認知機能に強い関係性が新たに見いだされた。

 化学メーカーの大手、花王のパーソナルヘルスケア研究所が「認知機能低下と1日の中での日常歩行速度の変化の間に関係性があること」を発見し、6月21日にその研究結果のレポートを一部公表した。レポートでは、「加齢歩数」という指標を用い、「加齢に伴う歩行安定性の変化」をより詳細に把握し、この新しい知見を地域や企業への健康支援サービスのさらなる向上へ応用し、歩行支援によるフレイル(心身の脆弱性)予防により健康寿命延伸へと貢献するとしている。「加齢に伴う歩行安定性の変化」とは「小股でゆっくりとした歩行など、高齢者に現れやすい不規則で不安定な歩行」のことだ。

 本研究では、高齢者を「健常者グループ」と「認知機能低下グループ」に分け、各々年代別に「日常歩行速度」を比較した。この計測には、花王の開発した「歩行専用高度活動量計」を用いた。これにより、これまで困難とされてきた「高齢者に現れやすい不規則・不安定な歩行」も計測可能となった。両者を計測した結果、両グループの「歩行速度の平均値」に差は見られなかったが、しかし、時間区分で見ると「認知機能低下グループでは12時以降の日常歩行速度が有意に低下している」ことがわかった。この結果からレポートでは「1日の中での日常歩行速度の変化をモニタリングすることで、日常機能が低下しているかどうか推定できる可能性」があることが判明したとしている。

 花王は「今後も、歩行支援によるフレイル予防などを通して健康寿命延伸に貢献し、一生涯を通して『歩く』という視点からのQOLの向上を支援」していくとしている。(なお、本研究は6月2~4日「第64回日本老年医学会学術集会」で発表されたものである)。(編集担当:久保田雄城)

花王が認知機能と日常歩行速度の変化の関係性を発見。これらの知見を地域や企業への健康支援サービス向上に応用し、歩行支援によるフレイル予防などを通して健康寿命延伸へと貢献。

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