新型コロナ後遺症の専門外来開設、医師「心に影響も。放置せず受診を」 福井県坂井市の耳鼻咽喉科医院、Bスポット療法

新型コロナウイルス感染症の後遺症の治療について説明する柗本順雄院長=福井県坂井市三国町のまつもと耳鼻咽喉科クリニック

 福井県坂井市の耳鼻咽喉科医院が、新型コロナウイルス感染症の後遺症に悩む患者を受け入れ、治療している。感染症がある程度回復した後も心身の不調が続く患者が遠方からも訪れており、担当の医師は「コロナの影響か、別の病気なのかを判断し、しっかり治療することが重要」と話す。

 坂井市三国町の「まつもと耳鼻咽喉科クリニック」は、「新型コロナ後遺症外来」として4月から、味覚・嗅覚障害が続く患者を中心に診療している。同クリニックによると、北陸で専門外来を設けている医療機関は少なく、嶺南や石川県から受診する人もいるという。

 後遺症の原因の一つとして、ウイルス感染などにより鼻と喉の境で炎症を起こして慢性化すると、脳機能が低下し自律神経障害などにつながると考えられている。同クリニックで患者の多くに行うのが、Bスポット療法(上咽頭擦過療法)。綿棒で塩化亜鉛の薬剤を患部に塗り、炎症を和らげる。患部をこするため、一時的に出血や痛みを生じる。麻酔液を塗ったり、薄めた薬剤を使ったり、こする強さを加減したりして、患者の負担を軽減している。

 柗本順雄院長によると、Bスポット療法は古くからある治療だが、痛みを伴うため患者から苦情が出ることもあり、実施機関は多くなかった。コロナ流行以降は、後遺症の有効な治療として注目され、各地の後遺症外来で導入されている。

 「(治療で)痛みや違和感が和らぎ、精神的にも楽になったという声が多い」と柗本院長。これまでに後遺症とみられる約20人が受診。定期的な治療で、味覚・嗅覚障害のほか、記憶力や集中力の低下、原因不明の全身疲労感が続く慢性疲労症候群、自律神経失調症などにも効果が出ているという。

 同クリニックではこのほか、血液検査やカメラによる鼻やのどの診察、症状に合わせて、点鼻薬や漢方薬を処方している。柗本院長は「後遺症は心にも影響を及ぼす。不安に思ったときは放置せずに診察を受けることが大切」と呼びかけている。

 ■新型コロナウイルス後遺症 主な症状は倦怠感、味覚・嗅覚障害、思考力・集中力の低下など。療養終了1カ月後を目安に行った県の調査によると、4人に1人が何らかの不調を訴えている。厚生労働省研究班の調査では、中等症以上で入院した人のうち約10%は退院から1年後も後遺症を抱えている可能性があるとの結果が出ている。

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