<書評>『南西諸島を自衛隊ミサイル基地化 対中国、日米共同作戦計画』 新たな戦争へ準備着々

 「戦後」が終わり、新たな「戦前」への動きが、南西諸島で急加速している。「外交・安保は国の専権事項」などという言葉をうのみにしていると、「主権者(国民)」は戦争に巻き込まれ、ウクライナの二の舞いになりかねない。

 京都在住の元朝日新聞記者が、ミサイル部隊の強行配備が進む宮古、石垣、馬毛島(鹿児島)など南西諸島の現地ルポとインタビューで告発し、警告と警鐘を鳴らす。ここまでくれば、もはや戦後が終わり、新たな戦争準備が着々を進んでいることに、読者は危機感を通り越し、脅威と恐怖を実感する。

 自衛隊の北方シフトから南西シフトへの転換は、2010年の「新たな防衛計画の大綱」(防衛大綱)で始まり、与那国、奄美、宮古、石垣へとミサイル部隊の配備を着々と進めている。

 配備は「警備隊」で発足、その後に地対空・地対艦ミサイル部隊へと変貌する。「保管庫・貯蔵庫」は「弾薬庫」に転換され、ミサイル基地へと進化していく。「だまし討ち」に住民が気付いた時には、住宅に近接する場所に弾薬庫は建設を終えている。手遅れである。

 ミサイル誘導システムが南西諸島に張り巡らされ、島々は「防衛上の秘密」「特定秘密保護法」のベールに包まれ事実の確認すら困難となる。

 自衛隊は、かつての戦艦大和級の護衛艦を空母に転換し、専守防衛は大型無人偵察機、空中警戒管制機、敵上空侵入を可能にするスタンド・オフ電子戦機の開発着手など敵基地攻撃能力を備えた「旧日本軍」へと変貌しているという。

 陸海空の自衛隊装備、防衛費の大幅増額、英仏独を超える兵力、在日米軍基地の装備や機能など重要事項のエッセンス、南西諸島戦場化の具体的な動きをコンパクトに読みやすく整理している。

 軟弱地盤、想定外の工費・工期、活断層、莫大(ばくだい)な自然破壊などの問題を抱えながらも政府が強行する辺野古新基地建設問題や米国では許されない航空法違反の普天間飛行場問題の核心など、読みやすくコンパクトに整理されている。

 この国の主権者なら最低限知っておきたい基本情報をまとめた入門書である。

(前泊博盛・沖縄国際大教授)
 とき・なおひこ 1946年鹿児島県生まれ。元朝日新聞記者。著書に「若狭の聖水が奈良に湧く『お水とり』『お水送り』の謎」「闘う沖縄 本土の責任―多角的論点丸わかり」。

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