落雪やあられ、雷…音を怖がり震える犬「恐怖症」かも 原因や症状、対策は【ペットドクター相談室】

音を怖がり震える犬「恐怖症」かも?

ここ数年、落雪の音や窓に当たる霰の音を怖がるようになり、一日中部屋の隅で震えていたり、抱っこをねだってついてまわったりで心配しています。抱っこしても落ち着かず、どうしてあげれば良いのか困っています。アドバイスをお願いします。(柴犬、ぐでさんの相談)

【お答えします】福井県獣医師会 開業部会 ラーバンの森動物病院(福井県坂井市)竹内美峰院長

 ◆  ◇  ◆

落雪や霰(あられ)、雷の音に対する怖がりや不安な症状から「恐怖症」を疑います。犬の恐怖症は、自分への生命を脅かす危険な状態を犬が不安に感じることで、怖がったり、回避したりする行動をとることから起こります。症状は、

・よだれがでる ・呼吸が早くなる ・震える ・おもらしをする ・パニックになって破壊行動をとる ・鳴く ・逃避行動をとる ・攻撃的な行動をする ・歩き回る ・隠れる ・飼い主への後追いをする ・自分の体を舐めたり噛んだりの自傷行為をする ・下痢や嘔吐などの消化器症状がでる

など多岐にわたります。

恐怖症を起こす理由、原因は?

1:その犬のもともとの性質、生まれた環境、子犬の時期(社会化期)の社会化不足の場合。もともと音に敏感な性質の犬だったり、生後3~13週の社会化期に様々な刺激に適応する学習が不足したりすると、いろいろな刺激に過敏に反応し、恐怖や不安を感じやすい性質になることがあります 2:落雪や霰、雷に対する強い恐怖体験がトラウマ(精神外傷)となった場合 3:飼い主が雷などを怖がる様子を見て、怖いものと学習した場合 4:落雪や霰、雷の時に飼い主にやさしくしてもらえ、怖がると優しくしてくれると学習した場合 5:医学的な原因がある場合。内分泌疾患、痛み、癲癇(てんかん)、認知機能不全などの疾病により不安傾向が高くなることがあります

これらの原因が1つ、もしくは複数相まって恐怖症を起こすと考えられています。

⇒飼い主が悩みがちな甘噛み 攻撃的な行動抑える方法は?

恐怖・不安行動の対処法

恐怖行動を起こしているとき

家族は平常心でいて、犬にはなにもしないことが必要になります。不安な犬を見ると「大丈夫だよ」となだめたくなりますが、なだめたりせず、抱っこせず、声掛けもせず普段通りに過ごします。

また叱ったり、強く拘束したり、たたくなどの体罰や罰を与えることはしません。罰を与えると、不安が増してトラウマになり症状が悪化します。もし、どうしても拘束が必要ならリードなどは少し余裕をもった長さにしてください。

⇒犬が足を舐めたり、噛んだりして毛が抜ける…なぜ?

普段からできること

なるべく恐怖の刺激を減らす工夫をします。例えば、優しいリラックスできる音楽を普段から流して、落雪や霰、雷など音が鳴っている時も流す、聞こえにくい部屋に犬を移動するなどです。

犬が安心できるスペースを確保することも重要です。専用のクレートなど安心して休める空間を準備し、その場所で普段からおやつやフードを与えます。クレートで過ごすと安心できる、クレートは大好きな空間だ、落雪など大きな音や不安な時でも「ここに入っていると安心だ」と思わせる空間を作りましょう。

また、狩猟本能を満喫できる遊びをいくつか提供したり、犬に何かしたりするときは声掛けをして犬とコミュニケーションを取り合い、普段から飼い主さんと犬の予測可能な関係を作ると、不安の症状は軽くなることがあります。

落雪や霰、雷の後、吐く、下痢をする、血便をする、痙攣(けいれん)をする、失神するなど、症状がひどい場合は放っておかず、かかりつけの動物病院に相談してください。

動物病院では病気が隠れていないかの検査やカウンセリングを行い、恐怖症に対する緩和プランを相談していきます。犬の性格の改善は無理ですが、不安を感じにくい環境づくりや接し方、恐怖を緩和するサプリメントの紹介、場合によっては投薬などをご家族と相談して対処していきます。

© 株式会社福井新聞社