選挙後の日本経済の行方は?防衛関連の銘柄が抱える課題と注目する2つのテーマ

7月8日(金)、史上最長の通算8年8カ月もの期間、首相をされた安倍晋三元首相が銃撃され、お亡くなりになりました。この場をお借りしてご冥福をお祈りします。


自民党が掲げる公約を読み解く

7月10日(日)に行われた参議院選挙は事前の予想通り、自民党、公明党の与党の勝利となりました。自民党が掲げる公約から今後期待出来る政策テーマなどを探っていこうと思います。公約は「日本を守る。」4項目と、「未来を創る。」3項目の、合計7項目から構成されています。

【日本を守る。4項目】
1.毅然とした外交・安全保障で、“日本”を守る
2.強力で機動的な原油高・物価高対策で、“国民の生活と産業”を守る
3.徹底した災害対策で、“国民の生命・財産・暮らし”を守る
4.感染症対策と社会・経済活動の両立で、“国民の命と暮らし”を守る

【未来を創る。3項目】
1.「新しい資本主義」で、 “強い経済”と“豊かさを実感できる社会”を創る
2.「デジタル田園都市国家構想」と「農林水産業・ 地域経済の振興」で “活力ある地方”を創る
3.憲法を改正し、新しい “国のかたち”を創る

日本を守るの1項目に「毅然とした外交・安全保障で」とあります。今年5月に岸田首相とバイデン大統領で行われた日米首脳会談の中で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、覇権主義的な行動を強める中国、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮などの軍事的圧力を踏まえ、日本政府は屈することがないよう軍事費について「相当な増額を確保する決意」であると表明しました。

7月16日(土)の日経新聞によると政府は、来年度の概算要求基準で防衛費に上限を設けない方針との報道もあります。日本への攻撃に対する「反撃能力」に使う防衛装備やサイバー・宇宙などの増額を見込むともあります。

注目する3つのテーマ

私としては昨年末辺りから防衛関連に注目していました。理由は安倍元首相の発言によるもので、中国による台湾武力侵攻は日米の有事であると述べる場面や、日本も敵基地攻撃能力は「基地に限定せず、中枢攻撃も含むべき」との発言など、有事に対しての見解が多く見られたからです。

年初から防衛関連の一角とされる三菱重工業(7011)、IHI(7013)などの株価は堅調に推移しました。しかし、今後の課題としては、防衛関連企業の決算が良くなるのかという点です。自衛隊の装備品を生産する防衛産業から、企業の撤退が相次いでいるのが現状です。背景には低い利益率や調達数の減少があります。納品後の利益率が、材料費の高騰や為替の影響により2~3%と低いのが現状です。今後は利益率の向上が課題になると考えます。

次に原油高、物価高対策で国民の生活を守るとあります。岸田首相は、7月14日(木)の記者会見で電力需給の逼迫が懸念される今冬に、最大9基の原発の稼働を進めるよう経産省に指示した事を表明しました。ただ、新規の再稼働ではなく、事前に決まっていた事であり、インパクトに欠ける内容となった事は否定できません。ロシアがサハリン2などで圧力を講じてくる状況の中、日本のエネルギー政策は今後の課題となりそうです。

また、新型コロナウイルスの感染が全国で拡大しています。岸田首相は行動制限を設けないと表明し、ワクチン接種や夏休みの帰省などに備えて「主要な駅や空港など100カ所以上の臨時の無料検査拠点を整備する」と述べています。また、7月20日(水)には塩野義製薬(4507)の新型コロナ治療薬候補「ゾコーバ錠」の緊急承認の可否が公開で審議される予定です。


参議院選挙で大勝した岸田政権が長期政権になる可能性があります。過去の日経平均株価を見ると、長期政権時は堅調に推移しています。

岸田首相は就任当初に金融所得課税強化など株式投資にネガティブな発言が多く、市場関係者からの支持率は高くありませんでした。しかし今後、その様な発言がなく、実際に課税が行われないのであれば、海外投資家による日本市場への資金流入も期待出来るのではないかと考えています。

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