「官邸の関与はあったのか」「行政はゆがめられたのか」疑惑答えぬ安倍元首相

安倍元首相の葬儀について、秋に「国葬」として実施すると発表した岸田首相。「民主主義を断固として守り抜く決意を示す」と強調したが、民主主義を軽んじた元首相の振る舞いをお忘れか。「新聞うずみ火」2017年11月号から「加計問題」を取り上げた記事「政治の私物化を許していいのか」をご紹介する。(新聞うずみ火編集部)

学校法人「加計学園」が国家戦略特区を利用し、愛媛県今治市に岡山理科大獣医学部を新設する計画をめぐり、計画公表前の文科省と内閣府のやり取りを記録したとされる文書の存在が判明。「総理の意向」との記載があり、国会で紛糾した。加計孝太郎理事長は安倍首相の「腹心の友」。野党は「加計ありき」で計画が進められたという疑惑を追及した。

安倍首相は「国会の閉会中審査で、私が直接指示をしたり、私から頼まれたりしたという人は一人もいなかった」と関与を否定したが、関係したとされる政治家や官僚たちが国会で「記録がない」「記憶がない」と繰り返し、疑惑は一向に晴れないばかりか、その後も三つの疑惑が新たに浮上した。

2017年6月に訪ねるとキャンパス建設が進んでいた=2017年6月、愛媛県今治市

一つは、2015年4月、加計学園の事務局長が愛媛県と今治市の担当者とともに官邸を訪れ、国家戦略特区を担当する首相秘書官に面会していたこと。この時期は、県と市が獣医学部新設を国家戦略特区に正式に提案する2カ月前、しかも事業主体である加計学園までもが首相に極めて近い首相秘書官と会っていたことになる。

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二つ目は、加計学園が建築費を水増しして市に補助金を申請したのではないかという疑惑。市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表の黒川敦彦さんは「加計学園の獣医学部の坪単価は約150万円ですが、専門家によれば60万~70万円が妥当だそうで、他校の事例と比べても2倍近い。市の補助金を不当に受給するために水増ししている可能性があります」と指摘している。学園側は否定したが、黒川さんが入手した図面には、最上階の7階にワインが70本収容できる「ワインセラー」や業務用の「ビールディスペンサー」、冷蔵ショーケースなども表記されていた。

2017年6月に訪ねた時はキャンパス建設が進められていた=愛媛県今治市

三つ目は、加計学園の獣医学部新設計画について、安倍首相が「今治市の国家戦略特区の事業者に決定した1月20日に初めて知った」と説明したこと。首相は加計理事長と何度もゴルフや会食をしている点を追及され、「食事代はごちそうすることもあるし、先方が持つ場合もある」と答弁した。そのことが「関係業者との接触に当たっては、供応接待を受けるなど、国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」と定める「大臣規範」に抵触しかねないとの判断があったからではないかと見られる。

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これらの疑惑も含めて、臨時国会で具体的な説明がなされるだろうと期待を寄せていたが、安倍首相は2017年9月28日、国会の召集と同時に解散した。

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