舞台に立つ喜び胸に とうきょう総文2022 7月末開幕 練習励む長崎県勢

「聞く人を元気づけられるように」と思いを込めて合唱する清峰高コーラス部=同校

 全国の高校生が参加する文化活動の祭典「第46回全国高校総合文化祭」(とうきょう総文2022)が7月31日~8月4日、東京都で開かれる。全国高総文祭は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一昨年がネット開催、昨年が一般観覧を制限しての現地開催となったが、今年は多くの部門で一般の観客を迎えてのステージが〝復活〟する予定。合唱や吹奏楽に出場する長崎県勢は目前に迫った本番に向け、それぞれの思いを胸に練習に励んでいる。
 「夜明けの来ない夜は無いさ」―。6月中旬の午後。合唱部門に参加する県立清峰高コーラス部18人の柔らかな歌声が校内に響いた。曲は部で代々歌い継いできた「瑠璃色の地球」だ。
 九州合唱コンクールに約30回出場の伝統校。だがコロナ禍以降は大会の中止や録音審査などが続き、3年生にとってはとうきょう総文が初の県外での発表。「大舞台の経験があまりなかったから、すごくうれしい」。3年で部長の近藤華さん(18)と副部長の下條美祐さん(17)は、こう声をそろえた。
 入部以来、休校や分散登校で思うように活動できない時期があった上、マスク着用で距離を保ちながら行う練習は、正しい口の動きが分かりづらく苦労した。だが、さまざまな声を持つ仲間と一つのハーモニーを作り出す過程はかけがえがない時間だった。「部活終わりに友達と一緒にハモりながら帰ったのが一番の楽しい思い出」と近藤さんは笑う。
 とうきょう総文の合唱部門は順位を競わない。観客に純粋に楽しんでもらえる曲をと、4年前の全国高総文祭出場時と同じ「瑠璃色の地球」と「となりのトトロ」を選んだ。普段から歌詞の朗読などを練習に取り入れ、一つ一つの曲が表現したいことを大切にしてきた同部。下條さんは「感謝の気持ちを込め、聞いてくれる人を元気づけられるような歌声を届けたい」、近藤部長は「3年間で大変なこともあったが、力を合わせれば良いものができることを伝えたい」とそれぞれ意気込んだ。
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 東京での本番を誰よりも楽しみにしているのは、彼女かもしれない。各校計約70人で吹奏楽部門に出場する県北地区選抜吹奏楽団の一員、県立北松西高2年の山田優さん(16)。とうきょう総文は部活動を始めて以来、大勢で演奏を披露する初の機会となる。
 離島の北松小値賀町にある同校で、みんなで音楽を作り上げる経験がしたいと吹奏楽部に入部。ホルンの担当になった。だが、3年生の引退などで6人いた部員が昨年秋には1人だけに。新型コロナの影響で、中学生と一緒に演奏するはずだった町の文化祭もなくなった。部活に行っても独奏曲の練習を続けるだけ。「これが吹奏楽なの?」。むなしさが込み上げた。
 そんなとき、顧問の教員が同選抜吹奏楽団のメンバーを選ぶオーディションへの参加を提案してくれた。自信はなかったが思い切って挑戦し、見事合格。喜びよりも驚きが勝った。
 昨年12月、佐世保市で初回の練習会に参加。約70人という未経験の人数に圧倒される間もなく合奏が始まると、体験したことがない音の厚みに包まれた。「この音の中に私の音が入っているんだ」。憧れの吹奏楽に、やっと触れた気がした。
 練習会後は1人の練習も楽しくなった。この春に1年生が加入し、部員は4人に。部活と並行して、とうきょう総文で披露する「西海讃歌」「長崎県スポーツ行進曲」も練習。「周りはみんな上手。もっと音量を上げないといけない」と自身を奮い立たせる。
 人前に立つのは苦手だが、優しくサポートしてくれる仲間と立つ舞台が待ち遠しい。「きっと大きなステージのはず。しっかりと演奏をして、全国の音楽を部活に持ち帰りたい」と声を弾ませた。

18部門、開会行事に329人参加

 とうきょう総文には県内の329人が18部門と開会行事に参加予定(6月14日現在)。昨年12月の全九州高校総合文化祭長崎大会や各部門の大会などで好成績を挙げた個人、団体が、日ごろの練習や活動の成果を披露する。
 全九州高総文祭で、県勢が多くの部門で優勝を飾った放送部門。アナウンス部門で九州一に輝いた長崎北の渡邊紗羽さんら個人6人が出場する。学校ごとに作品を出品するオーディオピクチャー部門は長崎工業、ビデオメッセージ部門は長崎北陽台と長崎西が参加する。
 弁論部門は大村の矢部小羽紅さんと波佐見の宮城楓さんが発表する。2人は全九州高総文祭でも入賞。このうち優秀賞だった矢部さんは「世界の母子を救いたい」と題し、安全な出産を支援する自身の志について語る。
 日本音楽部門では、昨年県勢初の全国入賞を果たした佐世保南邦楽部が出場。郷土芸能部門には瓊浦エイサー和太鼓同好会の和太鼓が初出場する。器楽・管弦楽部門では長崎北オーケストラ部、吟詠剣詩舞部門では佐世保北と佐世保高専の生徒が舞台に立つ。
 囲碁部門では、男子個人に青雲2年の松田侑晟さん、女子個人に同1年の陰山莉愛さんが出場。将棋部門は男子個人の佐世保南2年、柏木智成さんと清峰1年、溝田総史さん、女子個人の佐世保東翔3年、土井詠心さんがそれぞれ挑む。
 県高校文化連盟事務局は「今回の全国高総文祭では観客に見てもらえる機会が増える。会場の反応やライブ感をぜひ楽しんできてほしい」とした。

長崎県北地区選抜吹奏楽団の一員として練習に励む山田さん=北松西高(同校提供)

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