6月末に就任した北陸電力送配電(本店富山県富山市)の棚田一也社長が7月14日、福井新聞のインタビューに応じた。燃料価格の高騰を背景とする新電力の事業撤退などで、電力の契約先が見つからない企業に対して電気を供給する「最終保障供給制度」の契約が増えている状況を受け「今後も増え続ければ、電力の需給調整が難しくなる可能性もある」との認識を示した。
燃料費の高騰で送配電事業者の最終保障供給制度に頼らざるを得ない企業が増えている 「駆け込み寺のように契約が増え続けており、北陸エリアでは6月時点で200件を超えている。同制度の料金は北陸電力の標準メニューの1.2倍となっているが、現状、北陸電力で法人向けに提供している価格は卸市場価格を加味した料金で、同制度の料金が一番安くなっている状況」
「我々は送配電事業者なので発電所を持っておらず、最終保障の電気は需要と供給の安定のために確保している35万キロワットの中から供給している。今後も契約が増え続ければ、送配電事業者本来の目的である需給調整ができなくなることも想定され、安定供給する上で問題だと思っている」
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同制度の在り方について国で議論が進んでいる 「国の審議会で、送配電事業者も市場から電気を調達することが可能との方向性になりそうだ。同制度の料金にも市場価格を連動させ、小売価格よりも最終保障の方が高くなる方向に整備される方針だ」
「新電力の廃業で託送料金の未収も多く発生している。新電力に対しては預託金制度のようなものを設けることも考えていかなければならないと思う」
送配電設備の高経年化対策も今後の課題だ 「高度経済成長期に整備した送配電設備の改修や建て替えが必要となってくる。北陸エリアに約9200基ある鉄塔は一気に更新をすることはできないが、年間60基を建て替えるなど計画的に進める。鉄塔の間隔を延ばして5基を4基に減らすなどスリム化も図っていく」
最終保障供給制度 新電力の事業撤退などで、電力の契約先が見つからない法人に対して、送配電会社が電気を供給する制度。料金は大手電力が提供する標準的な価格の2割程度高い水準で固定しており、急速な燃料高を反映できずに他の法人向け料金より安いといった逆転現象が起こっている。