7年で3回の堤防決壊 地形的な要因も 宮城・大崎市の名蓋川

今後頻発の可能性も
出来川 宮城・美里町

15日から降り続いた記録的な大雨についてです。堤防が決壊し、住宅や農地の浸水を招いた宮城県大崎市の名蓋川。決壊は、過去7年間で3回も起きています。なぜ、繰り返すのか。専門家とともに上空から見ると、その理由が見えてきました。

鈴木奏斗アナウンサー「大崎市古川の矢目地区です。地区を流れる名蓋川が大雨で決壊して、地区に川の水が流れ込みました。ここは一面水田なんですが、ずっと奥まで冠水してしまっています」

名蓋川 宮城・大崎市 16日

宮城に大きな爪跡を残した記録的大雨。大崎市古川では、24時間の降水量が観測史上最大となる239ミリを記録しました。矢目地区では16日午前5時半ごろ、名蓋川の堤防が30メートルにわたって決壊し、大量の水が住宅や農地に流れ込みました。決壊直後の映像を地区の消防団が撮影していました。
大崎市古川消防団高倉分団遠藤直樹さん「最初は10メートルぐらいの幅だったんですけど、1時間ぐらいで20メートルぐらいの幅に広がって、そこからもう田んぼの方にバンバンと入ってくるような感じで、2時間ぐらいで水位は2メートルぐらいありましたね」

決壊直後の名蓋川

衛星写真で見た浸水前の矢目地区です。のどかな田園風景が広がっていましたが
決壊からわずか数時間で、一帯が茶色く濁った水にのみ込まれました。
宮城県が2022年度に補強工事を実施する予定だった名蓋川。堤防の決壊は、2015年の関東・東北豪雨、2019年の台風19号とこの7年間で3回にも上り、住民たちを悩ませてきました。なぜ、決壊を繰り返すのか。
住民「毎回、堤防のきちんとした整備をお願いしてるんですけど。3回なったらやっぱり住民も限界ですよ」

河川の氾濫に詳しい東北大学災害科学国際研究所の橋本雅和助教とともに、上空から決壊現場を調査しました。すると、記録的な雨量のほかに、地形的な要因が見えてきました。
東北大学災害科学国際研究所橋本雅和助教「(名蓋川の)両岸側に田んぼが広がっているので、勾配が比較的緩くて、水の勢いはそこまでないことが考えられるので、なかなか(下流に)流れ込んでいけずに、水位が堰上がっていた可能性があります」

地形的な要因が

橋本助教は、名蓋川のような勾配が緩やかな中小河川では、水がとどまり水位が急激に上昇するため、堤防の決壊が頻発しやすいと指摘。更に、川の形が比較的直線であることが、堤防の強化を難しくしていると話します。
東北大学災害科学国際研究所橋本雅和助教「例えば、蛇行していてカーブの外側でいつも氾濫する川であれば、そこだけ直せば対策としては十分な可能性がありますけれども、割と直線で勾配が緩くて複数箇所で決壊するような川は、川沿いに連続的に対策を取っていかないとなかなか解決にはならないので、そういう難しさがあることから、何度も何度も決壊してしまうというそういうことであると考えています」

出来川 宮城・美里町

県内では、美里町と涌谷町にまたがる出来川の堤防も決壊。こちらも周辺を田畑で囲まれた緩やかな河川です。橋本助教は、勾配の緩やかさに加え、植物が川の流れに影響したと分析します。
東北大学災害科学国際研究所橋本雅和助教「決壊した付近に少し植生が見えるので、植生が抵抗になって水の流れがゆっくりになって(水位が)上がって越水しやすくなります」

今後頻発の可能性も

橋本助教は近年、中小河川の氾濫は全国的に増えているとして、今後も頻発する可能性があると指摘しています。
東北大学災害科学国際研究所橋本雅和助教「今(堤防の)地道な整備を進めているところなので、時間と費用がかかるので整備が完了するまでソフト対策で補うという考え方になると思います。例えば、ハザードマップを確認したり、早めに避難をしたりすることが今後より重要になっていくと考えています」

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