福井の小中学生を見守り続けた90歳女性が思わず涙 “引退”を知った子どもたちから心温まる贈り物

36年間の見守り活動に終止符を打ち、児童から感謝状を贈られる立石ハルエさん(中央)=7月20日、福井県の福井市清明小学校

 福井県の福井市清明小学校で36年間にわたり登校の見守りをしてきた90歳の地元女性が“引退”を決め7月20日、児童から感謝状を贈られた。雨の日も雪の日も毎朝路上に立ってきたが、7月上旬にかけての猛暑で限界を感じた。女性は「子どもの笑顔は元気の源。感謝したいのは私の方」と充実した日々を振り返った。

 女性は立石ハルエさん=福井市。年長の孫が清明小に入学した53歳の時、学校と通称フェニックス通りとの間に通る旧北陸道(現市道)の交差点が危ないと感じ、孫の登校を見守るようになったのが始まり。今では5年生のひ孫が通う。

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 午前7時から、まずは自転車通学の足羽中学校生に「左側を走ろうね」などと呼び掛け、続いて集団登校の児童を見守った。危険を感じたこともある。10年ほど前、毎朝300人近い児童が渡る学校北側の橋の近くに立っていた時。1年生の女の子が道路に飛び出し、「危ないでしょう」としかった。「あの時は冷や汗をかいた」。2018年2月の豪雪ではスコップを手に、高く積もった歩道の雪をかき出した。

 見守りだけでなく、自宅の畑を開放しての野菜収穫体験も学校と連携して36年間、毎年続けた。こうした活動を生きがいにしてきたが、今年の猛暑の際に足元がふらつくように感じ、7月8日の金曜をもって見守り活動を終えた。収穫体験にも終止符を打つ予定だという。

 事情を聞いた児童たちは縦90センチ、横70センチの感謝状を作り20日、花束とともに立石さんに贈った。父親も清明小時代に見守ってもらったはずだと話す女子児童(6年)は「感謝を忘れず、これからも安全に気を付けます」と約束していた。

 立石さんは「一緒に見守りをした住民や家族の支えで続けられた。幸せな毎日だった」と涙を流した。

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