長崎市新庁舎 議会フロアにだけ「喫煙室」 医師会から反対受け再検討へ

 来年1月に開庁を予定する長崎市の新庁舎(地上19階、地下1階)建設を巡り、市議会が5階議会フロア内への喫煙室設置を内部の検討会で決めたことに、反対の声が上がっている。市医師会(松元定次会長)と県保険医協会(本田孝也会長)は20日、市と市議会に撤回や中止を求める要望書をそれぞれ提出。こうした声を受け、議会内で再検討が始まった模様だ。
 市議会事務局などによると、6月17日に各会派の議員で構成する議長の諮問機関「新市庁舎建設に係る議会機能整備検討会」で、喫煙室設置について協議。「喫煙する人の権利もある」「完全な分煙対策ができるのか」と賛否が分かれ「持ち帰って検討したい」との意見も出た。だが、新庁舎は11月末完成予定で、工期が差し迫っていることなどを理由に設置の方針を決めたという。
 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法は、行政機関の庁舎は敷地内禁煙の「第1種施設」と規定。それ以外の多数の人が利用する施設は「第2種施設」として原則屋内禁煙だが、喫煙専用室を設置できるとする。市は2019年の一部施行を受け、庁舎内の喫煙所を撤去。現在の議会棟は第2種施設に当たるとして20年に専用室を設けた。
 同法は「施設利用者が通常立ち入らない場所」などの条件を満たせば、第1種施設でも特定屋外喫煙場所の設置を認めているが、新庁舎では「適地がない」(市大型事業推進室)として設置しない。一方、議会フロアについて市は「他の行政フロアと機能が異なる」などとして「技術的な課題や費用の問題が解決できる場合は基本的に市議会の意向を尊重する」との立場だ。
 市医師会は「市庁舎内での禁煙を求める中で5階のみ喫煙可という計画自体、市民の理解は到底得られない」と撤回を要望。県保険医協会は「市民の健康を受動喫煙の危害から守ることを最優先に考え、行動すべき」と建物内全面禁煙を求めている。日本禁煙学会も7月12日に再考を求める要望書を提出している。


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