「よっぱらいサバ」猛暑で出荷できない異常事態…乱高下する海水温が魚に負荷 再開時期は未定、福井県小浜市のブランド魚

福井県小浜市田烏沖のいけすで元気に泳ぐよっぱらいサバ=2018年9月(田烏水産提供)
福井県小浜市田烏沖のいけす。より高温になりやすい海面付近にサバの姿は見えない

 福井県小浜市のブランド養殖魚「小浜よっぱらいサバ」の養殖業者が猛暑に頭を悩ませている。夏場に海水温が上昇し、いけすのサバが弱ったり死んだりするため出荷停止となる状況が近年続いており、今年は6月下旬に海水温が乱高下した影響で、初めて7月に出荷停止を余儀なくされた。再開のめどは立っておらず、関係者は「異常事態。餌やりなどの工夫だけでなく、出荷の仕方も考えていかないといけない」と対応を模索している。

 回遊魚のサバは暑さと寒さに弱く、海水の適温は15~23度程度とされる。同市田烏沖のいけすでよっぱらいサバを養殖する田烏水産では2020年8月、猛暑で水温が最高31度まで上昇し、4千匹以上のサバが死んで約2カ月間出荷停止となった。同社はこうした事態を繰り返さないため、21年は被害が大きくなる前に出荷を止める判断を下した。

⇒小浜市田烏沖のいけす。海面付近にサバの姿は見えない

 今年の計画では、7月まで鮮魚で、8~9月は冷凍したものを出荷する予定だった。しかし、小浜市では6月23日からの1週間で4回猛暑日となり、29日には6月の観測史上最高となる37.5度を記録。半日の間に水温が3~4度乱高下した日もあり、例年なら22~24度台で推移するはずの水温が一時27度台後半まで上がった。30日にはいけすのサバが数匹死んでいるのが見つかり、横泳ぎする異常行動も見られたため、7月4日から急きょ出荷停止した。

 現在は研究用も含め計約5千匹を育てているが、より高温な海面に浮上したり餌を消化したりするとサバに負荷がかかるため、餌やりは極力していない。同社の横山拓也社長(54)は「消化しやすいようペースト状にした餌を用意したところだった。工夫以前にこんなことになるとは」と苦笑する。現在は水温の乱高下は落ち着いたが、8月にかけ水温上昇が見込まれ、サバの体力を回復させる必要があるため、出荷再開時期は未定という。

 市里山里海課の担当者は「水温変化はどうしようもなく、千匹単位で死ぬ被害を繰り返さないようにするしかない」とした上で「夏は冷凍に絞るなど、出荷のルールを考える必要がある」と対策の一手を思案している。ブランド養殖魚として販路拡大を目指すため、横山社長は「鮮魚の方が新鮮でおいしいイメージがあるが、冷凍もうまみが出て味が良いと知ってもらうことも重要。冷凍のサバを生かした料理の提案も行い、ブランディングしていければ」と話している。

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