聖地で“帝王”が復活、ハーン親子が“ダブルウイン“達成。アンダーソンも総合2勝目/ETRC第4戦

 7月16~17日にトラックレーシングの“聖地”ドイツ・ニュルブルクリンクで争われた2022年ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ第4戦は、開幕戦から続く連続ポールポジション記録を“7“にまで伸ばしたノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が、オープニングヒートで定番のポール・トゥ・ウインを飾ったものの、この週末の王者の活躍はここまで。

 代わって主役の座に躍り出たのは、前人未到のシリーズ6冠を誇るヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)と、彼の息子であるシングルエントリーのルーカスで、土曜に息子のシリーズ初優勝を見届けた父は、明けた日曜に今季初のポールポジションを獲得すると、貫禄を示すかのように“ライト・トゥ・フラッグ”での今季初優勝を達成。ファミリーの成功を勝利で祝う復活劇となった。

 また最終ヒートでは、前戦スロバキアリンクで初のオーバーオール・ウインを飾ったプロモーターズ・カップ登録のジェイミー・アンダーソン(アンダーソン・レーシング/マン)が、早くも2勝目を手にしている。

 欧州各国から物流業務に従事する“トラッカー”たちが集う祭典が、コロナ禍で翻弄された2年を経てひさびさにドイツへと戻って来た。ハーンを筆頭に、サッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/マン)やシュテフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)など、すでに年間登録のレギュラー勢で最多を誇るドイツ勢に加え、この“聖地”での1戦に向けシングルエントリーでのニューフェイスがグリッドを強化。

 2021年最終戦のプロモーターズ・カップで2勝を挙げ、鮮烈な速さを披露した“帝王の息子”ルーカスを筆頭に、前戦から復帰エントリーのルイス・レクエンコ(ルイス・レクエンコ/マン)、オランダ出身のスカニア使いエルウィン・クレネージフォールト(EKトラックレース/スカニア)が2019年以来の参戦。そして開幕前からこの第4戦でのデビューがアナウンスされていたエマ・マキネン(チーム・シュバーベントラック/イベコ)がハルムの僚友としてエントリーし、強力な女性ドライバーラインアップを完成させた。

 こうして始まった週末は、土曜予選からチャンピオンがスーパーポール・セッションを制し、2017年王者アダム・ラッコ(バギラZMレーシング/フレイトライナー)、ハーン、レンツを従え11周のレース1も制圧。これで早くもシーズン9勝目を手にする。

ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)は、開幕戦から続く連続ポールポジション記録を“7”にまで伸ばす
オープニングヒートで定番のポール・トゥ・ウインを飾ったキスが、早くもシーズン9勝目を挙げた
続くレース2では、リバースポールの好機を捉えたルーカス・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)が隊列を率いる

■レース終盤の争いを冷静に対処したルーカスが初勝利を挙げる

 しかし、このヒートで8位に入ったルーカスが続くレース2のリバースポールを確保すると、地元での躍進を誓った若きスター候補生がこの勝機を逃すまいと奮闘。レース終盤にはアントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/マン)がテール・トゥ・ノーズで迫ったものの、冷静に対処したルーカスが12周の攻防を制して、ETRC初勝利を挙げてみせた。

「こうして表彰台の上に立つのは素晴らしい気分だよ! この勝利を祝うべく、僕の周りには家族、友人、多くの知人が一緒にいてくれたんだ。ここで勝つことはたくさんの意味があるし、僕の祖父コニーのためでもあった。彼は(この勝利を)とても誇りに思ってくれると思うよ」

 初勝利を挙げた息子が運気をもたらしたか、明けた日曜午前の予選はハーン一家に流れが傾き、ハンガリー出身の“絶対王者”キスは暫定ポールタイムを刻んだものの、スーパーポール・セッションで彼のトラックから黒煙が上がるトラブルが発生。

 シリーズ規則に従いすぐさまブラック/オレンジの旗が掲出され、条文の「黒煙を発するトラックはピットに入り、エンジン制御と排気設定を調整する必要がある」との文言をクリアする必要に迫られた。

 しかし時間内に技術的課題を解決できなかったレベス・レーシングのマンは、残念ながら予選タイム抹消の憂き目となり、レース3は10番グリッドからのスタートに。この結果、レンツをコンマ2秒上回ったハーンが今季初のポールを手にすることに。

 こうして昨日達成された息子の偉業を祝福するべく、すべてのお膳立てを整えた父ヨッヘンは、レンツとのドイツ人対決となったヒートで、バッテリーの不具合にも見舞われたライバルを差し置き独走体制へ。そのままレンツ、アルバセテを突き放したハーンが、2021年ミサノ戦以来となる今季初優勝を飾った。

 そして週末最終ヒートのレース4は、この日の予選をパワーステアリングのトラブルで不出走としていたアンダーソンが、前ヒートで最後尾から8位まで猛烈な挽回を見せてリバースポールを獲得する。そのままスタートから首位を守ったイギリス人は、残り3周で4秒あったギャップを猛然と削って来た王者キスを抑え切り、自身2度目の総合優勝を達成。3位にはラッコとの熾烈なサイド・バイ・サイドを制したハルムが入り、週末2度目の表彰台に上がっている。

 依然としてスタンディング上で大量リードを築くキスに対し、ハーンが2位浮上を果たして追撃体制に入り、レンツ、ラッコが続くオーダーへと変化した2022年のETRCシーズン。折り返しとなる第5戦は、サマーブレイクを挟んだ9月3~4日にチェコ共和国のアウトドローモ・モストで争われる。

息子の初勝利が流れを呼び込んだか、日曜予選では父ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)が今季初のポールを手にする
レンツ、アルバセテを突き放したハーンが、2021年ミサノ戦以来となる今季初優勝を飾った
最終のレース4は、プロモーターズ・カップ登録のジェイミー・アンダーソン(アンダーソン・レーシング/マン)が、シリーズ2勝目を挙げた

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