感動の復活劇…オープン3カ月後に全焼したジュエリー店、同じ場所で再オープン 歩んだ道のり、励ました客

店舗火災から復活して、リニューアルオープンを果たした(左から)青柳光春さん、檜佐歩夢さん、堀井晶子さん=さいたま市浦和区高砂2丁目

 埼玉県さいたま市浦和区高砂2丁目のさくら草通りに、ジュエリー専門店「シプレ ド・オール」が今月7日、リニューアルオープンした。昨年3月15日、隣接する店舗から出火し、同店は全焼した。「あの場所で復活したい」。約1年4カ月かけて再開にこぎ着け、経営する青柳光春さん(46)と妻の檜佐歩夢さん(45)は「無事に再オープンできて、ほっとしている」と語った。

 檜佐さんの父親が1981年、川口市内に工房を開き、オリジナルのジュエリーを制作、販売していた。後を継いだ檜佐さんらが制作、青柳さんが全国の催事場などを回り、販売を担当した。小売り店舗の開業を模索して2020年12月、さくら草通りに念願の実店舗をオープン。火災の発生は約3カ月後だった。檜佐さんが連絡を受け、現場に駆け付けた。火の勢いに圧倒されたが、幸い人的被害はなかった。

 4人の従業員を抱え、2人は「もう一回、店を出す」と決意し、同じ場所で復活させた。店舗の看板文字は少し傷があるだけで、新店舗でもそのまま活用した。営業は3カ月だけだったが、客が菓子を持って再訪してくれた。檜佐さんは「ありがたかった。気負わずに頑張りたい」と語る。

 同店はジュエリーの販売だけでなく、写真や絵画、美術などの文化を地域社会に発信していこうと、ギャラリーとしても活用。東日本大震災から10年となる昨年2月には、歩夢さんの妹で写真家の檜佐文野さんが被災地で撮影した写真展「東北の学校~あの日をつなぐ~」を開催した。青柳さんは文化発信について、「今は店の足固めをしていく。もう少し落ち着いたら、検討して、地域との接点をつくりたい」と話していた。

 販売を担当する堀井晶子さん(28)は昨年2月末から同店で勤務を始め、約2週間後に火災が起きた。ジュエリーが好きで制作現場を見て働きながら学べると思い、「辞めるという選択肢は全くなかった」。交流サイト(SNS)やホームページ(HP)の制作などで広報を担当し、「この1年間はすごく勉強になった。学んだことを店舗で生かしたい」と意気込んでいた。

全焼したジュエリー店。看板の文字は新店舗に活用された=昨年3月17日撮影(提供写真)

© 株式会社埼玉新聞社