HISがハウステンボス売却へ 長崎県内に衝撃 地域と連携し継続願う声

開業30周年を迎え記念セレモニーが企画され、市民や観光客でにぎわうハウステンボス=3月25日、佐世保市

 旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)が、長崎県佐世保市のハウステンボス(HTB)の売却を検討していることを受け、県内の観光、経済関係者には「驚いた」「どうなるのだろうか」と衝撃が走った。売却が検討されていることに戸惑いを見せながらも、地域と連携した事業継続を願う声が相次いだ。
 HTBは今年開業30周年。経営危機を何度も乗り越え、九州を代表する観光施設に発展し、本県観光を牽引(けんいん)している。佐世保観光コンベンション協会の飯田満治理事長は経済界との連携を注視。「現状の運営を持続し、本県観光の中心として継続していくことを望む」と語った。
 市内のホテル関係者は、HTBの入場者が回復傾向にあり、30周年記念イベントの盛り上がりを強調。「新たな事業展開は分からないが、今の勢いが続くようにしてほしい。HTBが元気になれば、周辺の施設も元気になる」と述べた。
 HTBに隣接する江上地区自治協議会の浦憲治会長によると、HTBと近隣の4地区自治協議会、佐世保市は連絡協議会をつくり、花火の騒音や交通渋滞の問題などを話し合ってきた。「地域とHTBはいろんな課題を話し合い、共存共栄を図っている。経営権が変わったとしても、地域とのつながりを大切にしてほしい」と要望した。
 「ニュースで知った」というHTBの女性従業員は「今後のことが決まったら、社員にも分かりやすく説明をしてほしい」と戸惑った様子。夫婦で来園していた佐世保市もみじが丘町の内野一馬さん(81)は「びっくり。雇用を生み出し、佐世保の経済維持に不可欠な施設で、人との交流ができる親しみやすい場所。株主が変わっても市や県のために貢献してほしい」と突然のニュースに驚いていた。
 一方、HTBと取引がある企業の社長は、香港の投資会社への売却を検討していることについて「所有者が変われば取引の見直しがあるかもしれない。HISは佐世保市の意向をくんでくれたと思うが、海外の会社になるとどうなるのだろうか」と不安を口にした。


© 株式会社長崎新聞社