農作物に安価な有機肥料 笹サイレージ販路拡大 大和フロンティア(都城市)

笹サイレージの製造工程。ロール状に固められた後、ラップに包み約40日間発酵させる(大和フロンティア提供)

 大和フロンティア(都城市、田中浩一郎社長)が製造・販売する、竹を材料とした「笹(ささ)サイレージ」が農産物の有機肥料として販路を拡大している。福岡を除く九州6県で続けてきた実証実験で結果が出ているためで、5月には初の鹿児島工場も稼働。6月の売上高は前年比3倍増となった。ウクライナ危機で飼・肥料の価格が高騰する中、より安価な代替品としても期待される。

 笹サイレージは、竹を粉砕して乳酸発酵させたもの。厄介者だった放置竹林を所有者に代わって無償伐採し、飼・肥料として生産者に格安で提供する「三方良し」のビジネスモデルだ。
 2016年に販売を開始。牛、豚、鶏の肉質改善や枝肉の重量増加といった効果を上げてきた。この数年、特に好調なのが土壌改良材としての活用だ。「土中の雑菌繁殖を抑え善玉菌の活性を促す」として九州全域に広がっている。
 背景には、各県JAや自治体による実証実験での成果がある。これまで水稲や甘藷(かんしょ)、ピーマン、キュウリ、トマト、カボチャ、マンゴー、スイートピーなど約20種類で効果を確認。そうか病や根腐れなどの発生が抑制されたほか、根の活着や茎、花の生育状況が向上したという。
 作物によっては収量が4割増、糖度が2度ほどアップした果樹も。独自のビジネスモデルと製造特許で価格帯を他社の竹粉の10分の1以下に押し下げ、採算ベースに乗せたことも販路拡大につながった。
 3年前に導入した新富町のピーマン農家福山三義(みよし)さん(72)は「(多孔質で酸素が入りやすい)竹は微生物のすみかになるためか、土が軟らかくなり根の張りが良くなった」と効果を実感。「ほかの農家にも勧めている」と話す。
 16年に40トンだった月間販売(生産)量は6年間で200トンに。需要拡大を受け、鹿児島県さつま町に建設したのは竹チップの製造工場。周辺で伐採した竹をチップ化して物流コストを抑えることで、高崎工場での生産集約を図る。来春には新富町にも工場を整備し、数年内には月間販売量を700トンに増やしたい考えだ。
 無償伐採の要請は「相当数」(同社)に上り、2年待ちの状態。田中社長は「設備投資などでなかなか利益が出なかったが、この数年でエビデンス(科学的根拠)を得て、ようやく軌道に乗り始めた。ウクライナ情勢にも左右されず供給できるのも強み」とさらなる伸びを見通している。

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