バイコレス改めヴァンウォールLMH、2日間のテストを実施「非常にポジティブ」とレース責任者

 バイコレス製のヴァンウォール・バンダーベルLMHは今週、ドイツ・ラウジッツリンクで2日間のテストを行いレーストラックに戻った。このテストについて、バイコレス・レーシングのオペレーション部門トップは「非常にポジティブ」であったと述べている。

 バイコレスのボリス・バーメスによると、トム・ディルマンがドライブするノンハイブリッド仕様のプロトタイプは、晴天に恵まれ暑くなったコンディションのなか、水曜日と木曜日に「270周以上(約938kmに相当)」をこなしたという。

 ギブソン製V8エンジンを搭載したハイパーカーにとって、これは今年3月にドイツ西部のツヴァイブリュッケン飛行場で行われたロールアウト直後に実施された、チェコのモスト・サーキットでのトラックテストに続く2度目の本格的なサーキットテストとなっている。ラウジッツリンクでは、バンクの付いたターン1を省き、三角形のアウターオーバルの第2ストレートの中間あたりで左に折れていく、短いインフィールド・コースでテストが行われた。

 バーメスは、「270周以上して、さまざまなことをテストした」とSportscar365に語った。

「このテストの主な目的である空力と信頼性について、多くのデータを収集した。今回もとてもポジティブな結果だったよ。ロングランもしたし、ショートランもした。目標は、信頼性のために距離を稼ぐことだった」

「我々は一貫して新しいビットをテストしている。水曜日の最高気温は40℃以上と極端に暑かったため、ラウジッツリンクでの走行は本当にいいテストになった」

「木曜日は35℃から30℃まで下がったが、これは非常にポジティブなことだった。なぜなら、そこで得ることのできるもっとも厳しい温度条件で走行できたからだ」

 バーメスは、モスト・サーキットでのテストとの間に3カ月の空白があったのは、バイコレスがル・マン・ハイパーカー(LMH)のためのFIA国際自動車連盟ホモローゲーション・プロセスの一部に集中していためだと説明した。

 彼はヴァンウォール・バンダーベルLMHが、5月にクラッシュテストを完了していると明言した。

「FIAのホモローゲーション・プロセスは、これらのセーフティテストの時期にやっていた」とバーメス。

「本来、これはずっと前に予定されていたことだ。トラックの空き状況を確認しなければならなかったため、(テストの)予約が少々難しくなった」

「15週間も休みを取るつもりはなかった。当初の計画では、ギャップはせいぜい7~8週間だったんだ」

 元バイコレスLMP1ドライバーのトム・ディルマンは、トラックテストの早い段階でのヴァンウォールLMHの信頼性に満足したようだ。

 ディルマンはSportscar365に対し、「僕たちは多くのマイレージを稼いで問題を得ようとしていた。しかし、今のところ何も起きていない」と語った。

「だから、セットアップやダウンフォースのレベルなど、クルマについて学び、シミュレーションとの相関関係を正しく理解するための作業を行った。新しいクルマを手に入れたら、いつもそうするんだ」

「でも一番大事なのは、毎日、走行距離を最大にしようとすることだ。9時から17時までほぼノンストップで走った。昼休みに1時間、クルマを降りただけだよ。いいスタートが切れたと思っている」

■今後数カ月以内に、さらなるテストを計画

 バーメスは、バイコレスの今年中のテスト計画について、毎月ほんの数日ずつ実施することを目標にしていると説明した。

 ヴァンウォールLMHは、早ければ来週にもドイツの別のサーキットで走り、それができなければ1カ月後にトラックに戻る可能性があると理解されている。

「今年の残りの期間は、テストするためのオプションがいくつかある」とバーメスは言う。

「8月はホリデーシーズンだから難しいだろうね。だから、次は9月の初旬になると思う。そして、9月にもオプションがある」

「10月に1回、11月上旬にポール・リカールに行く予定だ。11月末か12月上旬にはスペインでのテストを予定している。平均して、毎月2~3日の予定だ」

 テストは、ホモロゲーションに向けた車両開発プロセスの一部を形成するものであり、ここで競技用のクルマの設計と仕様を確定させるための準備が行われる。

 バイコレスは2022年WECシーズンへの参加申請を提出したものの却下されており、2023年にハイパーカークラスのグリッドに並ぶための参加承認を得られるかどうかは未知数だ。

 Sportscar365は、1950年代のF1チームであるヴァンウォール(Vanwall)の名称を使用するコンストラクターの権利に関連して、バイコレスとWEC主催者のFIAとACOフランス西部自動車クラブの間でここ数カ月の間に対話が行われたことを理解している。

 EU知的財産庁の公開ファイルによると、バイコレス社のPMCはヴァンウォールの名称を商標登録申請したが、イギリスでヴァンウォールの権利を持つ同国の会社から反対に遭ったという。一方、ドイツの企業登記簿によると、バイコレス社がLMHプロジェクトを収めているPMC GmbHは、今年2月にVanwall GmbHへと社名を変更している。

 ヴァンウォールは、イギリスのモータースポーツ・プライベーターのトニー・バンダーベル氏によって設立され、1958年のF1でフェラーリを破ってコンストラクターズタイトルを獲得している。

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