「住みながら街を作る」大学院生が考えた街なかの空き店舗“再生術” 持続可能なまちづくりのサイクルとは【SDGs】

空き店舗や空きスペースなど、街なかの使われていない場所を有効活用することで新たな街づくりを進める取り組みが静岡県掛川市で行われています。

掛川城のすぐそば、中心市街地に6、月から3人の大学院生が住んでいます。古くなり、空いていた建物をNPO法人が借り上げてリノベーションしました。

住みながら、自らの手で内装に手を加える取り組みとして、建築学を学ぶ学生が入居しました。

<静岡理工科大学 大学院 田井研究室 金子大海さん>

「壁に色を塗ったり、棚をつけたり、自由にできるので、学生の中で話し合いながらこの空間を作っていきたい」

<静岡理工科大学 大学院 田井研究室 田中葵さん>

「(自室に)机と椅子もない状態なので、机といすをまず作りたい」

キッチンのある共有スペースのほかに、個室が備えられています。

<静岡理工科大学 大学院 田井研究室 有田晃己さん>

「この部屋で生活というより、街に出たり、共有部分に出たりという生活がメインなので、不便は感じない」

3人が学ぶ研究室では、街づくりにも取り組んでいて、掛川市内の広場にユニークなデザインのベンチを設置したこともあります。

<静岡理工科大学 大学院 田井研究室 金子大海さん>

「住みながら街をつくれる拠点が欲しいということで、偶然こういう話があったので、これはチャンスだ、と思って(入居を)決めました」

この建物の売りは、屋上から掛川城の天守閣が見える立地の良さです。そこで3階部分は宿泊施設にリノベーションをしました。

<NPO法人 かけがわランド・バンク 南貴晴副理事長>

「このフロアは簡易宿所。もともとは古くなってボロボロだったが、全部新しくリノベーションした」

最大7人が泊まれる簡易宿所は、オープンに向けて動いています。運営するNPO法人は、建物を安く借り上げる代わりにリノベーション費用を負担しています。これによって所有者は、大きなリスクを背負うことなく「空き家再生」を依頼できるという仕組みです。

<NPO法人 かけがわランド・バンク 南貴晴副理事長>

「(所有者は)リフォーム等にお金を出すことが難しい場合が多い。街の空き店舗・空き家も埋まっていって、シャッター街も改善することにつながるのでは」

一方、こちらは空き店舗の活用です。掛川市が借り上げて改修した商店街の空き店舗を月におよそ1万円という安さで貸し出しています。

第1期として、年末まで出店することになったのは、カレーとコーヒーの店やアロマ店など3店舗です。

アロマ店は、これまでオンラインのみでの販売でしたが、今回初めて実店舗をオープンしました。家賃などを払って、実店舗を運営するリスクが掛川市の負担によって減ったため、思い切って出店できたそうです。

<アロマ販売店>

「やっぱり香りのものなので、実際に手にして、香ってもらわないと分からないところも多い。チャレンジするにはいい場だと思います」

多くの地方と同じように、掛川も商店街は少し元気がありません。空き店舗の増加にも悩まされています。

<商店街の店舗経営者>

「とにかく人が来ない、街中に来ないもんだから」

掛川市は危険な空き家や空き店舗の撤去を進めたうえで、まだまだ利用できる場所の活用に力を入れています。

<掛川市 都市政策課 森長亨課長>

「人が中心市街地に集まるきっかけづくりと、空き店舗の解消のため取り組んでいる。ここで経験を積んで、新たな実店舗で活躍できるよう願っています」

人を呼び込み、来た人を楽しませるという持続可能な街づくりのサイクルがいまある場所や魅力の有効活用で生まれようとしています。

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