濃厚接触者の待機期間短縮で「仕事回しやすく」「復帰後の発症怖い」 職場に交錯する歓迎と不安の声

濃厚接触者の待機期間

 新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者の待機期間を7日間から5日間に短縮する政府の方針を受け、感染急拡大で対応に追われる福井県内の介護関係者らからは7月22日、「仕事を回しやすくなる」など歓迎の声が聞かれた。一方、待機期間が最短3日で解除される点には「職場復帰後に発症することはないのか」と不安視する意見もあった。

 県によると、感染経路が介護施設と推定される感染者は、7月6~12日は31人だったが、13~19日は4倍近い117人に上っている。特別養護老人ホームなど複数の施設を運営する福井市の介護事業者では、濃厚接触者となった職員の欠勤が増え、デイサービスを中心に慢性的な人手不足が続き、他部署の応援でまかなっているという。

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 福井市の有料老人ホーム「あんしん村」の林智之主任ケアマネジャーは「職員が感染者や濃厚接触者になると、シフトを組み直す必要があり、業務の負担は大きくなる」と待機期間短縮を歓迎。ただ「急速に置き換わりが進む(オミクロン株派生型の)BA・5の情報が少なく、(最短3日の運用は)潜伏期間の面で懸念が残る」とも語った。

 別の施設の担当者は「職員の多くが子育て世代。子どもが陽性となった場合、濃厚接触者の待機期間が終わったからといって、子どもを残して出勤するのは難しいだろう」とみている。

 福井市で居酒屋などを営む40代社長は「飲食業界は人手不足で現場に余力がなく、従業員に感染や濃厚接触者が出ると店を休業せざるを得ない。待機期間の短縮は、休業が減ることにつながる」と前向きにとらえた。一方、同市内の繊維関連企業の60代社長は「濃厚接触者の従業員が復帰後に発症し、工場内でクラスター(感染者集団)が発生するのが怖い」と懸念した。

 県対策チームの担当者は、今年1月の調査でオミクロン株に感染した県内患者の潜伏期間が平均2.8日だったことを踏まえ、待機期間短縮を「合理的な判断」と評価。2回の検査陰性が前提の3日目の待機解除には「職場で検査できる医療、介護現場を念頭にした対応だろう。ゼロリスクではないが、普段から対策を徹底している職種でもあり、各施設で人手不足を防ぐための運用の選択肢が広がるのではないか」とした。

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