ランドセル重すぎない? 脱ゆとりで重量化、健康への影響は 【あなた発 とちぎ特命取材班】

ランドセルの中身の一部。パソコン本体で1.3キロある

 小学生の必需品とも言えるランドセル。「毎日背負う子どもにとって、重過ぎる」。記者はそんな話を耳にした。取材を始めると、心身に不調をもたらす「ランドセル症候群」との言葉もよく聞かれるようになっていることも分かり、実際、計ってみたら5年生のランドセルは7キロ超もあった。影響は。対策は。探ってみた。

 7月中旬、宇都宮市内の学童保育に協力してもらい、重さを計った。

 「6年間ずっと重いからもう慣れた」。そう言って笑った6年矢野愛梨(やのあいり)さん(11)。ランドセルは、教科書やドリル、ノートが計11冊とパソコン、筆箱が詰まって6.1キロだった。

 世間には「重くても楽をしてはいけない」といった声もある。矢野さんは「いろいろ言う大人は背負ってみてほしい」と漏らす。

 記者も背負ってみた。フィット感はあるが、両肩にベルトが食い込み、重さで体が左右に揺れる。歩くと不安定さを感じた。

 他の子のランドセルも大半が4~6キロ台。最重量は5年生男児の7.2キロだった。水筒やプールバッグ、体操着などが加わると、負担はさらに大きくなる。

 1年生男児を迎えに訪れた母親の原田知恵子(はらだちえこ)さん(40)は「まるで重い荷物を背負って歩く昔の人のよう」と嘆く。入学から3カ月余り。ランドセルを下ろしても前かがみの姿勢が続いている気がするようになった。「いつも『重たい』と言っている。健康状態が心配」と打ち明けた。

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 「10年ほど前から徐々に重くなっている」と日光市内の小学校長(55)。脱ゆとり教育に伴う教材充実などが背景とみられる。

 教科書やプリントの大型化、教科書を上下2冊から1冊構成に、などさまざまな変化が起きている。

 全児童生徒にパソコンやタブレット端末を配備する「GIGAスクール構想」も、その一つだ。新型コロナウイルス禍による休校への備えや充電のため持ち帰るケースも見られ、校内での盗難被害を防止するとの理由もあった。

 小学生らの持ち物が重いとの指摘を受け、文部科学省は2018年、重さや量に配慮を求める通知を全国の教育委員会に出し「置き勉」を認めた。

 6年生の矢野さんが通う小学校は学年や曜日ごとに「置き勉」を指導し、保護者と相談しながら対応して負担軽減に取り組む。宇都宮市教委も優れた取り組みを全校に共有するなど、対策に本腰を入れている。

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 医療関係者も発達段階の子どもへの影響を懸念する。宇都宮市松原2丁目の高瀬整形外科には近年、ランドセルの重さを理由に肩や首の痛みを訴えて受診する小学生が一定数いる。

 大塚稔(おおつかみのる)院長(70)はかつて学校帰りに来院した小学5年生の女子児童がとりわけ印象に残っている。ランドセルは勉強道具でいっぱい。両手に体操着や水筒をぶら下げ「肩や首が凝って痛い」と訴えた。女子児童はなで肩で、鎖骨が水平になっているため、肩こりや首こりを起こしやすいことが分かったという。

 大塚院長は「手で持って重いと感じるものを背中で背負うのは大変だ」と指摘。体格にもよるが「3~4キロ程度の荷物が理想」と話す。「朝の時間」の四肢体幹のストレッチや、ランドセルのベルトを調整して意識的に姿勢を正すことが効果的だという。

児童のランドセル。本体だけで6.7キロある
パソコンや教科書などが詰まったランドセル
小学生の荷物重量化の背景

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