ランドセルが重すぎるから 小学生のアイデアが生んだ人気商品 【あなた発 とちぎ特命取材班】

さんぽセルを発案した双子の児童=6月下旬、日光市内

 重いランドセルを軽くしようと、日光市の児童らが「さんぽセル」という商品を生み出した。ランドセルにタイヤや持ち手などを取り付け、キャリーケースのように運べるようにした商品で、体感約90%の重さを軽減できるという。4月に発売され話題となり、現在4カ月待ちの人気ぶりだ。

 昨年夏、日光市の山あいにある廃校舎「旧野口小学校」。小学4~6年だった児童6人が訪れた。旧野口小の利活用を検討する地元事業者が「ヒントを得よう」と連れてきた、サッカーチームのメンバーらだった。

 さんぽセル開発のきっかけは、メンバーの1人の一言。「ここにゲーム部屋を作りたいな」

 ちょうど視察に訪れていた大阪市福島区の企画会社「悟空のきもち THE LABO(ザ ラボ)」で活動する大学3年太田旭(おおたあさひ)さん(21)が、その言葉を耳にする。「自分たちでお金を作る方法を考えてみなよ。何か悩みある?」と問いかけると、児童は「ランドセルが重い」と答えた。

 「ザ ラボ」は、子どもから望みやアイデアを聞きながら製品を開発する。「ザ ラボ」の大学生に見守られ、児童たちはその場で試作に取り組んだ。材料は校舎にあった椅子やガムテープなど。アイデアは、その日のうちにまとまった。

 大学生らは、試作品ができる度、児童に試してもらい、改良を重ねた。商品の強度を高めようと、自動車の安全部品などを製作する真岡市の「アオキシンテック」に協力を依頼するなどし、完成させた。

 軽量にこだわり、重さはわずか280グラム。歩道橋や階段では通常のランドセル同様背負える仕様に。タイヤ部分は交換できる。

 「さんぽセルを友達にも配りたい」との児童の提案を受け、「ザ ラボ」は5月末、費用捻出のためのクラウドファンディングを開始。わずか2週間で約3500台分の金額が集まったという。

 6月14日、末松信介(すえまつしんすけ)文部科学相による会見で、記者からさんぽセルについて質問が出た。末松氏は「素晴らしい取り組みだ」と称賛。会見映像を見ていた、さんぽセル考案者で双子の小学5年、ゆうや君とれいや君(10)は「褒められてうれしかった」とはにかむ。「でも1番の願いはランドセルが軽くなること」。自分たちの行動が課題解決に向けた第一歩になったと信じている。

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ランドセルはどうして重くなった?

さんぽセルを考案した児童たち=6月下旬、日光市内

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