箱根駅伝の全国化 青学・原監督「厳しく言えば、茶番」のワケ 地方の大学に聞くと…

青山学院大学 陸上競技部 原 晋 監督
「スポーツ全体に対するチャンスだと思っています」

【図解】ココがこんなに違うよ学生3大駅伝(出雲・全日本大学・箱根)

再来年、箱根駅伝の参加資格が関東だけでなく、全国に拡大します。ということは、広島の大学も出られるのかも?

学生
「駅伝という文化の一番頂点みたいな感じですかね。自分の中で箱根が、出れたら一番うれしいんですけど」

ただ、一方では…。

学生
「自分たちとはレベルが全然、違いますし…」

広島経済大学 陸上競技部 尾方 剛 監督
「1年ちょっとで何とかしろと言われても難しいと思うので…」

青山学院大学 陸上競技部 原 晋 監督
「厳しい言葉で言うならば、茶番なんです、実は」

今回のテーマは、『箱根駅伝の全国化!… で どうなる?』。地元の大学…お正月から応援したいけど…?

ご存じの方も多いと思いますが、学生が正月に坂道を走り抜けるあの箱根駅伝が第100回大会で大きく変わります。今は、「関東」の学生の大会ですが、再来年2024年は、予選会の参加資格が全国の大学に広がります。

青山学院の原監督にとってみれば、ライバルが増えるってこと…。それでも箱根駅伝の全国化を大歓迎するという箱根駅伝の覇者、とも言える青山学院大学の原 晋 監督に聞いてみました。

青山学院大学 陸上競技部 原 晋 監督
「箱根駅伝に地方大学が出る、出られないではなくて、まずはチャンスが与えられたということは、陸上競技・長距離の競技レベルが上がるきっかけになると思う」

以前から箱根駅伝の全国化に期待していた広島出身の原監督は、これが陸上界・スポーツ界にとどまらず、地方の活性化につながると強調します。

原 晋 監督
「たとえば、広島経済大が箱根駅伝に出場できるというような条件になったら、地元名門校・世羅高校の学生が地元に残って、地元に進学して、たとえば地元の中国電力に就職するという、地元で育てて、地元に残って、さらに地元を活性化させるという好循環が生まれるチャンスが出てくる」

とはいえ、「全国化」が決まったのは、現状では第100回大会だけ。101回以降の大会について関東学生陸連は、「全国化」を継続するかどうか決めていません。

原 晋 監督
「ただ、厳しい言葉で言うならば、茶番なんです。形だけ、とりあえず100回大会、地方にも開放しようという形にはなりました。しかしながら、現実問題としてはこの100回大会に出れるチャンスのある学生は、今の高校3年生が入学して、大学1年生のときに100回大会を迎える。今の高校3年生は、だいたいスカウティングがほぼ終えているような状態の中で、ほぼ関東に行く予定の学生が多い。広島経済大学に今から箱根駅伝を目指そうという時間的な余裕はないわけです」

原監督も名前を挙げた広島経済大学陸上競技部です。

箱根駅伝と並び、「3大駅伝」と言われる出雲駅伝に19回、全日本大学駅伝にも23回出場している中四国屈指の強豪校です。

兵庫県出身 横田吏功 選手(3年)
「出雲駅伝と全日本大学駅伝に出場するためにこの大学を選びました。

兵庫県出身 福永恭平 選手(4年生)
「走るんだったら強いところがいいかなと思って、広島で強いところで走ろうと思って、広島経済大学にさせてもらいました」

箱根駅伝には、関東の大学20校が出場します。広島経済大学は、全国大会となる出雲駅伝で去年16位、全日本大学駅伝でおととし20位に入っています。ということは、チャンスは十分あるように思えますが…?

兵庫県出身 福永恭平 選手(4年)
「距離が全然違ってきて、短い距離だったらうちも対抗できるかなと思うんですけど」

兵庫県出身 横田吏功 選手(3年)
「ぼくらは全日本大学駅伝や出雲は、10キロ~20キロと比較的短い距離なので、そこは違うところかなと思います」

出雲駅伝や全日本大学駅伝と箱根駅伝とでは、走る距離も人数も大きく違います。

広島経済大学 陸上部を率いる尾方剛 監督。マラソンで北京オリンピック代表、世界陸上 銅メダリスト、まさに長距離界の第一人者ですが…?

広島経済大学 陸上競技部 尾方 剛 監督
「もうちょっと早く、5年くらい前に言ってもらえたらよかったかなと思います。まず、選手ですね。(予選会で)20キロ走れる選手を12人作らないといけないので、時間的にもないですし、合宿とかも行かないといけないですし、コーチだったり、スカウト担当だったり、そういう費用が地方大学だと難しいと思いますね」

尾方監督自身、山梨学院大学在籍中に出場し、優勝に貢献しました。箱根の厳しさを知り尽くしています。

尾方剛 監督
― 学生が箱根駅伝に出たいと言ったら?
「練習は間違いなく、きつくなるよというのは言いますけど」

― どれくらいきつくなる?
「倍にはなるんじゃないですかね。走る距離も増えると思いますし、もちろん質も上げていかなくてはいけないので。でも、練習の質を上げると、たぶんできない選手ばかりなので、かなりしんどいですね」

日程的な厳しさもあります。

箱根駅伝の予選会は、出雲駅伝と全日本大学駅伝の本番にはさまれているのです。

尾方剛 監督
「かなりタイトなスケジュールになっていますから、どこに合わせてやるかといったら、やっぱり全国大会に合わせてやらないといけないと思う。箱根の予選会に合わせるという選択は難しいんじゃないかと思います」

― 3大駅伝の違いをまとめてみました。全国から参加する「出雲駅伝」は、6区間で6区間あって、平均は7.5キロ。同じく「全日本大学駅伝」は、8区間で平均13.4キロ。

これに対し、「箱根駅伝」は、10区間で平均21.7キロと、人の数も距離も倍増するのです。つまり、長い距離を走れる選手を大勢育てなくてはいけない。しかもタイミング的に有望な高校生は、すでに関東の大学に進学している。地方の大学にも参加資格が広がったとはいえ、厳しいのです。

― さらに日程が難しいのです。箱根駅伝予選会は、10月後半に行われるが、出雲駅伝の本番が10月9日、全日本大学駅伝の本番が11月5日。走る距離や選手層・日程と課題は多い。

青山学院大学の原監督は、「だからこそ、記念大会の1回だけで終わらず、継続してほしい」と訴えます。

青山学院大学 陸上競技部 原 晋 監督
「100回大会だけという短期的な視点でとらえたらダメです。箱根駅伝の魅力をまずはこの機会に感じ取っていただいて、『地方からでも出れるんだ』『出場可能なんだ』『出場すべきなんだ』という主義主張を自らの言葉でもって、これを訴えかけてください」

「100回大会を機に、地方大学にも箱根駅伝出場できる環境を一緒に作っていきましょう。期待しています。そして、あわよくば地元・広島からも箱根駅伝、100回大会闘いましょう。青山学院も負けませんよ」

― 青山学院大学・原監督の理想も…、広島経済大学・尾方監督の「5年前に言ってくれたら…」という時間かかるんだということも分かりますし、ぜひ一回だけでなく、時間をかけて長いスパンで見たいところもありますよね。

陸上をやっていないものでも分かるような、本当にメジャーな大会なので、学生の間でも、あこがれは広がるなと…。

連続してこれから続けてもらうことによって、全国の戦力が拮抗するような、そういった戦いがみたいと思いますね。

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