江戸からの旅路に思い馳せ 心つなぐ「HAIKU」草加から魅力発信 30日、奥の細道サミット

松尾芭蕉像を見つめる青柳優さん=6月23日午後、草加市神明

 俳人・松尾芭蕉が関東から東北、北陸を約2400キロ巡り、道中をつづった紀行文「おくのほそ道」。沿道ゆかりの自治体が一堂に集まる会議「奥の細道サミット」が30日、埼玉県草加市で29年ぶりに開催される。テーマは、日本で生まれ世界で愛される「HAIKU」(俳句)。トークショーや講演などで俳句の魅力を広く発信する。

 サミットは1988年から毎年、沿道自治体が輪番で会場地となり今年で35回目。ここ2年間は新型コロナウイルスのため中止で、開催は実に3年ぶりとなる。

 サミット加盟自治体は出発地の深川がある東京都江東区から、芭蕉生誕地の三重県伊賀市、そのほかに寺社や顕彰会など合わせて全46団体。県内では杉戸町も加入する。

■過去にキーン氏

 「草加の魅力を広く発信できる機会。草加がおくのほそ道のメッカといわれるように頑張りたい」。国指定名勝「草加松原」の芭蕉像建立などにも尽力し、今回のサミットで実行委員を務める青柳優さん(79)は心待ちにする。草加市が開催地となるのは1993年9月の第6回に続き2度目。当時は草加市を含む全国16自治体と江東区芭蕉記念館が参加した。毎回主に2日間のプログラムで、初日が一般向けの講演やトークショー、2日目が参加自治体向けの市内視察会。目玉として米国出身の日本文学者ドナルド・キーン氏が講演し、「おくのほそ道」の奥深さや芭蕉の足跡を解説した。青柳さんは「奥の細道市民推進委員会」のメンバーとして当時も携わった数少ない一人で、「勝手にキーンさんに中学生との写真撮影をお願いしたら、快く引き受けてくれて。周囲はピリピリした雰囲気だったが、あの時のキーンさんの笑顔が忘れられない」と前回を振り返る。

■「早加」に誇り

 ホストタウン開催に草加市の浅井昌志市長は「おくのほそ道は世界に誇る日本文学。松尾芭蕉の人物像も含めて多くの人に知ってもらい、開催を成功させたい」と意気込む。

 当初は17団体が参加予定だったが、新型コロナ感染再拡大に伴い、2日目に予定されていた視察会は中止となった。30日の一般向けイベントは行われる予定で、市はスタンプラリーや芭蕉パネル展で盛り上げを図る。

 青柳さんは「サミットが開催できることは、市民と行政が一体となって町おこしを続けてきた証左。作品の中に『早(草)加』の2文字が刻まれることを誇りに、いつまでもおくのほそ道を愛し、守り続ける。この草加の心意気は変わらない」と話している。

■奥の細道サミットin草加

 7月30日アコスホールで一般向け開催。午前11時から「おくのほそ道 草加松原国際俳句大会」授賞式。事前申し込み不要、当日先着100人。

 午後3時15分から市内中学生の群読や三味線弾き語り、同3時40分から国文学者の堀切実氏による記念講演、同4時40分から俳人の黒田杏子氏、長谷川櫂氏、井上康明氏、詩人のアーサー・ビナード氏によるドナルド・キーン生誕100周年記念トークセッション(午後のプログラムはいずれも既に申し込み終了)。

 問い合わせは、市文化観光課(電話048.922.2968)へ。

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