海の安全守りたい…敦賀海保の若き海上保安官が見た悲劇 強い思い胸に海水浴客へ注意呼び掛け 

海水浴客に海難事故防止を呼びかける敦賀海上保安部の野中さん(中央)=7月18日、福井県敦賀市の松原海水浴場

 福井の海の安全を守りたい-。「海の日」の7月18日、敦賀海上保安部交通課の野中琢真さん(22)が、福井県敦賀市の松原海水浴場で水難事故防止を呼びかけた。同保安部に異動して迎える初めての夏。過去に海水浴客が命を落とす事故を見てきたからこそ「二度と悲惨な海難事故を起こさせたくない」。強い思いを胸に現場を回っている。

 野中さんは今春、浜田海上保安部(島根県)から敦賀保安部に異動した。海難事故防止のため、海水浴場や海上などで啓発活動を行う中心職員の一人だ。

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 大阪府出身。「海が好きで海に携われる仕事をしたかった」と海上保安官を志した。海上保安学校を卒業後、今春までは浜田海上保安部の巡視船「いわみ」に乗って領海警備などを担った。

 同保安部時代、島根県浜田市内の海水浴場で遊泳していた外国人男性が行方不明になったことがあった。男性は酒を飲み、泳ぎに出たという。野中さんは同僚らとともに小型船に乗り込んで周囲を捜索。関係機関と連携し3日間、日の出から日没まで探し回った。男性はその後、遺体となって発見された。「とても悔しい」思いは今も忘れられない。

 18日は訪れた海水浴客にチラシを配り「酒を飲んだら泳がない」「風や潮の流れで沖に流されないよう注意」などと訴えた。ポルトガル語に翻訳したチラシも配り、家族連れには「子どもから目を離さないように」と声をかけた。

 マリンレジャーによる7、8月の県内での海難事故者は2020年が6人(1人死亡)で、21年は10人。16人のうち、12人は海水浴中だった。近年はスタンドアップパドルボード(SUP)による事故も増加傾向にある。 

 「海は楽しくてすてきな場所」と野中さん。だからこそ、ルールを守って安全にマリンレジャーを楽しんでもらいたいというのが願いだ。本格的な海水浴シーズンはまだ始まったばかり。「使命感を持って啓発を続けていきたい。それが事故防止につながると信じている」

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